生涯現役に向けた一歩を踏み出すために、何から始めればいいか。自分の中に眠る「変わる力」や「どこでも通用するスキル」を見つけることだ。人生のオーナーシップを持った個人が増えれば、組織と個人の関係も変わる。

 「私は今『違和感センサー』が結構、働いているみたい」「私は『過度な自己犠牲』が高いのが気になる」。4月のある日、30〜50代の男女が3〜4人ずつのグループに分かれてオンライン上で熱心に話し合っていた。テーマは「自分の“変身資産”を知る」。皆が事前に受けた自己診断結果を持ち寄っていた。

 ライフシフト・ジャパン(東京・中央)が定期的に開くワークショップ「LIFE SHIFT JOURNEY(ライフシフト・ジャーニー)」の一コマだ。同社は2017年、人生100年時代において自律的な生き方を目指す人々のキャリアを支援するという理念を掲げて立ち上がった。

人生の「オーナーシップ」

 設立時からのメンバーである大野誠一代表は、その狙いについて、「多くの日本人が100歳まで生きることに対して不安やネガティブな感情を抱いている。その現状を変えたかった」と話す。ライフシフト・ジャパンでは「自分の人生を自分で決める『オーナーシップ』」を重視する。

 長寿化で人々の生き方は変わる。これまで、人の一生は一般に年齢で区分された3つのステージで捉えられてきた。0~20歳前後は社会を生きるのに必要な教育期。20代から60歳前後までは生きるために働く時期。最後は仕事を引退した後の余生だ。しかし、人生が100年に延びると生活に必要なお金も増え、より長く働く必要が出てくる。

長寿化によって生き方が劇的に変わる
●新旧の人生モデルの違い
長寿化によって生き方が劇的に変わる
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 そこで英ロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・グラットン教授が提唱するのが「マルチステージ」という人生モデルだ。20歳前後で社会に出てからも、学び直しを繰り返すことで、会社勤めのみならず、フリーランスや起業、ボランティアなどさまざまなステージを並行・移行しながら生涯現役であり続ける。年齢と人生のステージは一緒ではなく、変化の多い人生モデルとなる(上の図参照)。それだけに、個々人のオーナーシップが非常に重要になる。

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 マルチステージを生きるのに求められるのが、お金に換算できない「無形資産」だ。家族や友人、知識、健康といった無形の資産は、それ自体が有意義な人生に必要不可欠。同時に、有形の金銭的資産の形成を助けてもくれる。無形資産は主に「生産性資産」「活力資産」「変身資産」に分けられる(右参照)。

 ライフシフト・ジャパンのワークショップでは、自分の無形資産が何であるかを把握するプログラムを提供している。中でも重視するのが、冒頭のワークショップでもテーマにもなっていた「変身資産」だ。

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