ITソリューションで成長するため、約1兆円で米社を買収した。鈍牛といわれた日立。スピード感のある事業変革に欠かせぬピースという。構造改革を終え、新たな日立の姿をどう描いているのか聞いた。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

PROFILE

小島啓二[こじま・けいじ] 氏
1956年、東京都生まれ。82年京都大学大学院修了、日立製作所入社。研究開発で経験を積み、基礎研究の中央研究所長、インフラ技術研究の日立研究所長を務める。2016年、ITソリューション「ルマーダ」を立ち上げた。医療機器関連の事業売却、自動車部品の事業統合など事業構造改革にも携わる。技術と事業の両面を知る逸材として、成長の10年を託された。21年6月に社長兼COO、22年4月に社長兼CEO。(写真=北山 宏一)

2009年3月期に7873億円という巨額の最終赤字を計上し、川村さん、中西さん、東原さんが構造改革をして、バトンが小島さんに託されました。ご自身の役割をどう感じられていますか。

 資金的な危機から脱出してV字回復した後、二度とこれほど大きな赤字を出さない企業になると固く決意して、この10年間ひたすら手を打って事業の構造を変えてきました。我々の目指す方向性とは違ったところで成長すべきだと思った事業は外へ出し、必要だと思う事業は取り込み買収する。このようにして事業ポートフォリオの入れ替えをし続けた10年間と言っていいでしょう。

 そして構造改革にはめどがつきました。定常的にポートフォリオの改革は続けなければならないが、一番ベースの部分はもうそんなに変えるつもりはありません。むしろ、このそろったアセットをしっかり回してキャッシュをつくり、投資と還元に充てて大きくしていく。企業としてオーガニックな成長へとかじを切る。これが自分の役割だと思います。

難しい役回りですね。

 従業員全員の考えが成長を強く意識するように変わっていかないといけない。事業の出し入れではなく、自らのアセットをどうキャッシュに変えていくのか、ここを重視する必要があります。各事業で重要視する指標も、事業の取捨選択の基準としてきた営業利益率からキャッシュベースに変わっていきます。

 基礎工事は川村、中西、東原と相当な勢いでやってきた。東原はブルドーザーとしかいいようがないくらいにものすごい勢いで整地作業をしてきた。後の自分がいかに生かすかに成長できるかがかかっています。

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