巨額買収をてこに世界の企業のデジタル化を促していく日立製作所。顧客を変えるだけでなく、自らもまた積極的な変革を進める。デジタル人材を今後3年で約10万人へと5割増やす。
「なぜ、先ほど接客の時、その資料に付箋を貼ったのですか」
日立製作所の顧客であるカーディーラーの店舗。そのスタッフを質問攻めにしていたのは、日立デジタルシステム&サービス統括本部の赤司卓也・主任デザイナーだ。
相手の現場に入り込んで、関係者にインタビューを重ね、真の顧客ニーズが何かを見つける──。そこから赤司さんの仕事は始まる。
赤司さんは2003年、製品デザイナーとして日立に入社した。当初は医療機器などをデザインしていたが、今デザインをする対象はプロダクトではない。「デザインシンカー」として、顧客との協創案件の始動段階で、課題を明確にし、どのように解決していくかグランドデザインを描く。
12種類のデジタルスキル
デザインシンカーは、社内で定義づけられた「デザインシンキング」というスキルを持つ。ほかにも、データサイエンティストは「データサイエンス」として定義づけられたスキルを持つ。日立には全部で12のスキルがあり、一つでも持っていれば「デジタル人材」だ。
すべてのデジタル人材に等級があり、上からプレミアム、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズとなっている。赤司さんはプラチナだ。決められた講座を受けたり、実際の案件に携わったりすることでランクが上がっていく。海外の顧客も相手にできる場合はプレミアムになる。
定義を設けたことで、社員のモチベーションが向上した。デザインシンカーのブロンズ、隠岐加奈さんは「自分の役割が分かりやすくなった」と話す。データサイエンティストのシルバー、平野勲さんは「スキルが明確になり、データ分析の精度向上といった細かいところまで評価してもらえるようになった」と話す。
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