岡山県備前市の同前嘉浩は下水道整備の手法を見直して事業費を20億円削減した。ホルグ(横浜市)の主催する「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード 2020」にも選ばれている(写真=菅野 勝男)
岡山県備前市の同前嘉浩は下水道整備の手法を見直して事業費を20億円削減した。ホルグ(横浜市)の主催する「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード 2020」にも選ばれている(写真=菅野 勝男)

 異端児を使いこなせない「岩盤組織」は企業だけに限らない。柔軟性に乏しい印象が強い地方の自治体にも、異能は存在する。いかにしてはぐれ者を活用しているのか。

 瀬戸内海から内陸へ深く入り込んだ入り江に、低い山々が迫る景色が印象的な岡山県備前市。人口3万人余りの小さなまちの市役所に、一人のスーパー公務員がいる。同前嘉浩は2017年4月から21年3月末まで働いた下水道課で、整備の在り方を大胆に見直して、事業費を20億円削減した。一般会計の当初予算が200億円規模の同市にとっては目覚ましい成果だ。

(写真=菅野 勝男)
(写真=菅野 勝男)

 下水管は一般的に、河川や用水路と交差する箇所では地中深くに掘り下げて下をくぐらせる必要があり、費用がかさむ。同前は、埋設するのではなく河川に架かる橋に下水管を取り付けたり、利用されなくなった用水路を廃止したりする手法で工費を大幅に削減した。ため池の一部を埋め立てて、浅い場所に下水管を通したこともあったという。

 きっかけは住民からかけられた一言だった。「こんな田舎の地区に、どうして高いカネをかけて下水道を整備するのか」

 市の財政状況がよくない中で、収益率を考慮せずに下水管を延ばしてきた経緯がある。このままでいいのか。同前は下水道の路線ごとの収益率を計算した。すると、赤字路線が次々に見つかる。気になって、自分の担当外エリアや、今後整備していく計画地域を調べると、整備費用28億円に対して将来収益は50年間でわずか8億円。20億円もの大赤字が予想されることが判明した。

 事業そのものの中止を訴えたが、上司は「これまでやってきたことでもあるし」と取り合わない。ならば整備費用を安くするしかないと、思い定めた。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1429文字 / 全文2143文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「異端児に託す経営」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。