割高な車両価格や航続距離、充電インフラなど課題も多いとされてきたEV。しかしガソリン価格の高騰で、その前提も変わろうとしている。EVは本当に合理的な選択肢なのか。各国のユーザーの声を聞いてみよう。

 エネルギーインフレが襲っている欧州。今年に入りいくつかの国では、ガソリンやディーゼルの最高値が1リットル300円を超えている。

 それが追い風となっているのが電気自動車(EV)だ。もともと1km走行当たりでは電気代の方が燃料代より安かった上、値上げ幅は燃料代の方が大きい。ランニングコストがエンジン車に比べて相対的に安くなり、EVの需要が伸び続けている。

 欧州主要18カ国の2021年のEV販売台数は前年比64%増の119万台。22年1~3月も前年同期比59%増と勢いは衰えていない。各社が続々と新型車を発売していることもあり、もはやEVはニッチなクルマではなくなっている。

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 ドイツ・デュッセルドルフ近郊に住むマティアス・ビエニエクさんは21年11月に、仏ルノー傘下の低価格ブランドであるダチアのEV「ダチア・スプリング」を購入した。

(写真=Mari Kusakari)
(写真=Mari Kusakari)

 「ルーマニアで開発された中国生産の新型車を購入するリスクは理解していた。実際に乗ってみると想像以上に快適で大満足だ」と話す。

 ダチア・スプリングは低価格車として知られる。提示価格は2万1000ユーロ(約290万円)だったが、メーカーやドイツ政府からの補助金で、車両価格は1万2000ユーロに値下がりした。保有していたフォルクスワーゲン(VW)「ポロ」の下取り価格が6000ユーロだったので、実質的な購入価格は6000ユーロ(約83万円)だ。

 安価なEVは家族に不可欠な足となっている。ビエニエクさんの妻が片道25kmの通勤で利用するほか、ビエニエクさんも片道25kmほどのデュッセルドルフの中心地まで買い物などのため週に2~3回利用する。

 満足感の一つはエネルギー代の安さだ。平均すると月に2000km乗っており、5月には走行距離が合計で1万kmに達した。この間にかかった電気代はおよそ400ユーロ。ガソリンが1リットル当たり2ユーロを超えるため、以前の「ポロ」であれば4倍の1600ユーロぐらい払っていた可能性があると試算している。

トヨタ愛好家がVWに乗り換え

 欧州では新しい物好きや環境意識の高い人だけがEVを選んでいるわけではない。様々な優遇制度があるノルウェーでは新車販売に占めるEV比率が22年3月に8割を超えた。オスロ在住のマーガレットさんはトヨタ自動車の「カローラ」や「ヤリス」「オーリス」を乗り継いできた、30年間ほどのトヨタ愛好家。「我が家にはセカンドカーはない。だから耐久性や安全性を重視している」と話す。