なぜ今、重要性が高まっているのか。安全保障と経済はいかなる関係にあるのか。サイバーセキュリティーとインテリジェンスの専門家が「経済安全保障」を語る。
手塚 悟[慶応義塾大学 教授]
ウクライナ大統領の「つぶやき」から学ぶこと

慶応義塾大学 教授
ウクライナの通信インフラの強じんさに驚かされる。ゼレンスキー大統領は今も、ツイッターで日に何度もつぶやいている。米議会や日本の国会向けの演説も途切れることなく流れた。ロシア軍は当然、通信網の遮断を試みているだろうが。
なぜ、それほど強じんなのか。それは、クリミア半島を併合されたのに続き、ロシアに電力網をサイバー攻撃され痛い目に遭ってきたからだ。強じんな通信網の裏には、さらに堅固な電力網が存在している。
ウクライナは2015年と16年に大停電に見舞われた。15年12月に起きた大停電はウクライナ西部で暮らす22万5000世帯を暗闇に陥れた。16年12月には首都キーウ(キエフ)が暗黒世界を経験した。
原因はロシアによるサイバー攻撃だった。ウクライナはソ連(当時)が崩壊するまで同国を構成する共和国だったから、電力網はロシア製だ。ロシアは当然、その脆弱性のありかを知り抜いている。
痛い目に遭ったウクライナは電力網の大改造に乗り出した。第1は、米国が使用している不正アクセス防止の仕組みの導入。これにより、ロシアによるサイバー攻撃に対して障壁を設けた。
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