この記事は日経ビジネス電子版に『売り上げの4割「架空」も 成果重視の株主資本主義、企業に重圧』(6月14日)、『三菱電機をむしばんだ同調圧力 不祥事が暴く「日本品質」の危機』(6月15日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』6月20日号に掲載するものです。

この20年、急速に広がった株主資本主義と成果主義。コスト削減に追われ疲弊した製造現場は同調圧力で不正を続けた。新旧の難題が不正の根絶を阻む。このままでは日本品質が危ない。

(写真=つのだよしお/アフロ)
(写真=つのだよしお/アフロ)

 「もう3割(増)を割ると機関投資家が許さん。ミニマム3割だ!」

 不正会計を繰り返した揚げ句、2月末に東京証券取引所1部(当時)から上場廃止となったグレイステクノロジー。創業者で不正が発覚する前の2021年4月に病死したA氏はここ数年、会社幹部を相手に社内でしばしば怒声を上げていたという。

 冒頭の言葉は、20年2月14日の経営会議・取締役会でのもの。「3割」とは前期比の売上高と利益の成長率目標だ。3月期末を目前に控え、達成しなければ機関投資家に相手にされなくなると叫んでいたのである。

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 企業を舞台にした不正がなくならないのはなぜなのか。原因の一つは、この20年急速に進んだ企業と個人への業績プレッシャーの増大だろう。とりわけ目立つのが経営者にかかる成長への重圧だ。

 01年4月には持ち合い株の時価評価が始まり、05年4月からは事業の将来性が悪化し、予想収益が落ちる場合に、その事業のために保有する設備や不動産などの価値を下げる減損処理が強制適用になった。会計基準が世界標準に近づいたことで、1990年代末から始まった外国人株主の増加に一段と拍車がかかった。

 2014年2月には、機関投資家が投資先企業に持続的成長を促す行動を取るスチュワードシップ・コードが策定され、投資家による成長企業の選別も加速していった。

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