氷河期の当時、大卒の就職率は大きく落ち込んだ。「自己責任」という言葉が台頭、本人の頑張りが足りないと言われてきた。だが、就職率低下の真の理由は日本が抱えた複数の構造問題にある。

(写真=2点:共同通信)
(写真=2点:共同通信)

 氷河期世代であっても、少ない採用枠の中で大企業に入社し、経営の中核を担う人材として成長した人もいる。「76(ナナロク)世代」の起業家たちのように、変化の空気を感じ取り、閉塞感を打ち破るべく道を開いた人も少なくない。

 だが、その数約1700万人といわれる氷河期世代だ。成功者の背後にいる、不遇な状況から抜け出せていない人のほうが、まだまだ多いのが実態だろう。

 「国や会社が個人の仕事や生活スタイルに道筋を付けてくれる時代が、氷河期以降はもはや望めなくなってしまった」。千葉商科大学准教授の常見陽平氏は、氷河期以前と以後で、最も異なるポイントは「自立を要求された」点に尽きると語る。

「会社人間は要りません」

 常見氏が大手企業を対象に、1990年代の入社式での社長訓示を調査したところ、96年以降「組織から離れても自分を発揮できる力を身に付けましょう。会社人間は要りません」「会社に言われたことだけやるのではなく、自分磨き、プロを目指しましょう」といった、個人の努力を促す言葉や内容の増加に気づいた。

 同時に台頭し始めたのが「甘え」「自己責任」という言葉だ。成功者がいるのだから、就職活動がうまくいかずいい仕事に就けなかった理由は本人にあると捉えられた。

 「親などの経済的支えが若年者の失業を可能にしている側面もある」「若年者を取り巻く環境が豊かになり、必ずしも正社員の形態をとらなくても生活できるという状況」。これは、厚生労働省が2000年に雇用環境について記したリポート「平成12年版労働経済の分析」内で、氷河期世代の失業問題について触れられている部分だ。国も当初は自己責任論に近い見方をしていたことが分かる。

 1990年代後半から2000年代初めの約10年間で、大卒就職率は70%から55%まで落ち込み、大卒者全体に占める無業率(一時的な仕事に就いた人も含む無業者の割合)は3割近い水準まで高まった。この急激な変化を自己責任と片付けることができるのだろうか。

 多くの人は氷河期世代が誕生した理由を企業の採用抑制が長期にわたり続いたからだと考えている。だが、下記の学歴別就職者数の推移グラフでは、大卒の就職者数は氷河期であってもほぼ横ばいで大きく落ち込んでいない。企業規模や業種では違いがあれど、マクロレベルではバブル崩壊前と大して変わらない数の大卒者が労働市場に参入していた。

高卒就職者数が急激に減少した ●学歴別就職者数と大卒就職率の推移
高卒就職者数が急激に減少した ●学歴別就職者数と大卒就職率の推移
出所:文部科学省「学校基本調査」
[画像のクリックで拡大表示]

次ページ 高卒就職者の急減が影響