加入者の医療費の大部分を負担する医療保険者にとって、加入者が健診を受けて健康状態を維持するように促すことは、財政面の健全性を保つためにも重要な事業課題だ。健診を促すはがきを送ってきたが、いかに受診率を上げていくかが悩みどころだった。そこで、協会けんぽ京都支部が目を付けたのが行動経済学に基づくナッジの活用だ。PR会社のオズマピーアール(東京・千代田)が21年に立ち上げたナッジ活用の専門チームが協力し、案内はがきなど広報物を改良した。

[画像のクリックで拡大表示]

 「もったいない」や「○○円相当が無料」はいずれも読み手の損失回避バイアスに訴えるものだ。オズマピーアールの藤本正太氏は「案内を利用してもらうことに特化するよう心がけた。注意書きなどを網羅的に載せるのもやめた」と話す。さらに文言作成に当たっては青森大学の竹林正樹客員教授にもチェックを依頼。「過度な“あおり”になっていないか、倫理面でもチェックした」という。医療保険者という公法人の取り組みだけに、きめ細かい配慮も必要になるとの判断だ。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り3413文字 / 全文4873文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「買わせる心理学 進化する本能マーケティング」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。