日常に定着しつつある本能マーケティング。ただし、その使い方を誤ると「毒薬」として逆効果を生みかねない。失敗事例から、行動経済学との正しい向き合い方を考える。
「一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものでした」。5月3日、大幸薬品のホームページに掲載された文章は、主力製品である空間除菌剤「クレベリン」の広告表示を巡る問題へのおわびだ。
自社サイトやテレビCMなどでクレベリンが「空間や物に付いたウイルス・菌を99.9%除去する」とうたっていた大幸薬品に対し、消費者庁は4月中旬、60gと150gの置き型2商品が景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして再発防止命令を出した。広告表示に合理的根拠がなかったためだ。

クレベリンの好調な売り上げなどを主因として、同社は2020年12月期に過去最高益を記録。新型コロナウイルス禍で除菌用品のニーズが急増した恩恵を受けてきたものの、今回優良誤認とされた広告宣伝はまさに、コロナにかかりたくないといった消費者の損失回避に乗じた手法だったといえる。
度々問題になるステルスマーケティング(ステマ)も、本能マーケティングとの結び付きは強い。動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」を巡り、運営会社である北京字節跳動科技(バイトダンス)の日本法人は19年7月から21年12月末まで、延べ20人のツイッターインフルエンサーに報酬として計約7600万円を支払っていた。
SNS(交流サイト)での広告案件には「#PR」などと記して判別しやすくするルールが形成されつつあるが、TikTokでは広告との趣旨を記載していなかった。

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