この記事は日経ビジネス電子版に『タイガースファンも大爆笑 人が動きたくなるオモロイ“仕掛学”』(5月19日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』5月23日号に掲載するものです。
大阪大学の教授が「オモロイ仕掛け」で、人々の行動を変容させている。ナッジのように潜在意識に働きかけるのではなく、意識的に動かす「仕掛学」。ポイントは、仕掛ける側の狙いと行動を起こす目的の「ズラし」にある。
プロ野球阪神タイガースの本拠地、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で観客らの注目をひときわ集めるスポットがある。イタリア・ローマにある石の彫刻「真実の口」を模した、タイガースのマスコットキャラクターのモニュメントだ。阪神ファンが次々と口に手を入れ、「ホンマもんのファンちゃうってことやな」などと笑い合っている。
嘘をついていたら手が抜けなくなる……わけはない。傍らにはこう書かれている。「本当の阪神ファンならアルコールがでます」
そう、これは来場者に手指消毒を促す仕掛けだ。このゴールデンウイークに観戦に来た阪神ファンの夫婦は「遊び心が満載。めっちゃおもろい」と夢中でマスコットの口に手を突っ込んでいた。

タイガースが2021年4月に「ファンに楽しんでもらいながら自発的な感染対策を促したい」(担当者)と設置したこの仕掛け。元ネタになったのは、大阪大学大学院経済学研究科の松村真宏教授が18年に大阪大学医学部付属病院で実施した「手指衛生“真実の口”キャンペーン」だった。
新型コロナウイルス感染症が確認されていなかった当時、手指の消毒をしていたのは来院者のわずか0.6%。しかし、真実の口を模した仕掛けを取り入れたところ、20倍近い約10%の人が「真実の口」に手を入れて消毒をするようになったのだ。
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