サウナの本場フィンランドは、幸福度ランキング世界一の国だ。幸福度とサウナとの関連性を探るべく取材班は現地に飛んだ。見えたのは、他者を思う気遣い。サウナは心を豊かにする現代の茶室だ。

 真っ白な雪、薄黒い石から立ち上る蒸気、そしてピンク色に上気した肌──。

 3月下旬、特集班は「サウナ王国」フィンランドを訪れた。そこには雪深き大自然の中で、思い思いにサウナを楽しむ人々の姿があった。

 フィンランドではサウナが各家庭に備わり、人口およそ550万人の国に約300万のサウナがあるといわれる。サウナの広義である熱気浴は先史時代から世界各地にあるが、フィンランドでは戦後、電気サウナストーブが普及し、日常生活に浸透した。

 2020年にはフィンランドのサウナ文化が国連教育科学文化機関(ユネスコ)から無形文化遺産に登録された。フィンランド在住のサウナ文化研究家、こばやしあやな氏によると、「この10年ほどで、公衆サウナが復活している」という。

 王国の中でも「サウナ首都」を宣言している都市タンペレ。ここに1906年に創業した同国最古の公衆サウナ「ラヤポルッティ・サウナ」がある。ラヤポルッティは壁と同化した石造りの巨大ストーブが中央にそびえたち、女性と男性のサウナルームを分けている。地元民たちが小さなサウナ室に肩を寄せ合い汗を流す。20年以上通う常連客は息子とサウナを楽しみ、気温0度近い外気でリラックスしていた。

フィンランドで現存最古の公衆サウナ
フィンランドで現存最古の公衆サウナ
外気浴を楽しむ親子
外気浴を楽しむ親子

 銭湯と同じようにフィンランドのサウナにも中高年の憩いの場というイメージがあったが、最近は客層が広がっている。首都ヘルシンキに16年にオープンした近代的なサウナ「ロウリュ」では、多くのカップルや若者グループがサウナで肩を寄せ合う。バルト海に面しており、サウナで温まった身体を海水で冷やす人々でにぎわう。飲食店も併設し、おしゃれな雰囲気を醸し出している。

 ここ数年は、サウナを目的にした観光客も増え、ロウリュにも多くの人が押し寄せていた。自然豊かな中部のユバスキュラは、国内外の旅行客を対象としたサウナツーリズムも盛んになった。ユバスキュラの中心地に近くには、今夏にサウナを売りにした複合施設も完成する予定だ。サウナ室から湖を見渡し、湖の中で火照った身体をクールダウンすることもできる趣向だ。

今夏に中部ユバスキュラでオープンするサウナと飲食店などの複合施設「ヴィール」(写真=Chikako Harada)
今夏に中部ユバスキュラでオープンするサウナと飲食店などの複合施設「ヴィール」(写真=Chikako Harada)

 新型コロナウイルスの感染拡大は、公衆サウナの逆風になったものの、フィンランドのサウナの「エコシステム(生態系)」は屈強だった。むしろサウナ関連企業は新型コロナ禍に業績を大きく伸ばしている。

 フィンランド中南部ムーラメに本社と工場を構えるのが、サウナストーブ世界シェア首位のハルビアだ。工場内に足を踏み入れると、多くの従業員がストーブやサウナ室の製造に取り組み、次々と完成品を積み上げていた。

ハルビアの本社工場(写真=Chikako Harada)
ハルビアの本社工場(写真=Chikako Harada)

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