サウナを観光振興や街おこしの起爆剤にする動きが盛んだ。自然の景観を生かし、地元の風物を感じられるサウナ体験など特色を打ち出す。サウナを熱源に地域経済は盛り上がるか。

 「クォー!」。真冬の氷結した湖に「サウナー」たちの歓声が上がる。北海道の帯広駅から車で50分。新得町のくったり湖畔にあるレイク・インではフィンランド発祥のサウナの楽しみ方「アヴァント」を体験する人たちでにぎわう。

(写真=箕浦 伸雄)
(写真=箕浦 伸雄)

 湖畔のサウナ室から約20m先にあるのは天然の水風呂だ。凍り付いた湖を縦2m、横1.5mの四角形に切り出して穴を作る。水温は1~3月だと1度以下にもなり、70~90度のサウナで汗をかいた後にドボン。その後は氷上で遮るものがない大自然のど真ん中で外気浴を堪能できる。知人と訪れた29歳の男性会社員は、「水風呂で冷凍されかけたが、その分外気浴は極上」と白い歯を見せた。

新得町のレイク・インでは氷結した湖に穴を開けて水風呂にする「アヴァント」を体験できる(写真=箕浦 伸雄)
新得町のレイク・インでは氷結した湖に穴を開けて水風呂にする「アヴァント」を体験できる(写真=箕浦 伸雄)

 手掛けたのは道内でホテル5施設を運営するホテル十勝屋の後藤陽介社長だ。サウナで観光振興を目指そうと2020年4月に設立された十勝サウナ協議会の会長も務める。後藤社長は「十勝地方はこれまで札幌や旭川から道東へ向かう通過点だった。サウナ資源を生かして滞在型に変えれば経済効果は高まるはず」と話す。

 協議会は当初、10の企業・団体で発足。今では18にまで増え、フィンランド式の「ロウリュ」が楽しめる9施設が参画する。十勝産のシラカバの木を使ったサウナ室、地元でとれる麦飯石を使ったサウナストーン、健康増進のため体に当てて使うヴィヒタ(シラカバの枝葉)と地産地消のサウナ体験にこだわる。

 20年の秋冬には3施設を2500円で回れて1施設当たり実質30~50%安くなる日帰り入浴パスポートを販売。1000枚の発行に対して800枚が売れた。21年分は4施設で3000円に設定したが、ほぼ同じ売り上げを確保できたという。十勝地方の在住者による購買が7割を占めるなど、意外な需要も掘り起こす。

 観光にサウナを取り入れたきっかけは、森のスパリゾート北海道ホテル(帯広市)を経営する林克彦氏との雑談だった。19年、フィンランドのサウナツアーに参加した林氏は、ホスピタリティーあふれるサウナ文化に感動。自然の風景も帯広と似ており、話を聞いた後藤氏は「やる価値はある」とホテル浴室にサウナを併設した。

 新型コロナウイルス禍で宿泊客数は伸び悩むも、日帰り入浴の利用者数は19年比2.5~3倍に増加。稼働率は81%とコロナ前の平均から12ポイント落ちたが「間違いなくサウナが下支え役になった」(後藤社長)。

 「点から面へ広げれば十勝を『サウナ共和国』とうたえるようになる」。19年、林氏が発起人となり仲間づくりを始めた。当初は「勝手に盛り上がっているだけ」と白い目で見られたが、サウナ事業の収支計画や十勝ならではのサウナツーリズムを説いて回り、協賛の輪を広げた。

 「サウナは自然と相性が良い。そして日本にはサウナが生かせる自然はたくさんある」。こう話すのは地方創生事業などを手掛けるFoundingBase(東京・豊島)の佐々木喬志CEO(最高経営責任者)だ。海に囲まれ、火山国で地形は起伏に富み、そこに川が流れる日本。サウナを足せば、普段はつい見過ごしてしまう豊かな自然が極上の「コト消費」に生まれ変わる。

 同社は大分県豊後高田市で「長崎鼻ビーチリゾート」を運営する。美しい海を生かした人工海浜に面するものの、年間の宿泊客は数十人ほどしかいなかった。同社が運営に携わり始め、敷地内にサウナを設置。海を水風呂代わりに使ってもらうなどの取り組みを進めると、21年度の利用客は6000人以上に増えた。

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