この記事は日経ビジネス電子版に『伊藤忠・岡藤会長の危機感「問題は慢心。大木も芯から腐る」』(4月21日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月25日号に掲載するものです。

2021年3月期、利益・株価・時価総額で三菱商事、三井物産、住友商事を超え「3冠」達成。万年4位とされた伊藤忠商事の業績を業界トップに押し上げたが、「敵は慢心」と自戒する。トップ就任から12年。後継者についても語った。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=陶山 勉)
(写真=陶山 勉)
PROFILE

岡藤正広[おかふじ・まさひろ]氏
1949年12月、大阪府生まれ。74年に東京大学経済学部を卒業し、伊藤忠商事に入社。2006年専務、09年副社長を経て、10年4月に社長。繊維部門が長く、海外駐在経験がないままトップに就いた。18年4月から代表取締役会長CEO(最高経営責任者)。任期中に時価総額を約5倍に引き上げた。

伊藤忠商事はバブル崩壊後に経営危機に見舞われ、三菱商事、三井物産、住友商事に続く「万年4位」といわれていました。今、業界首位を争うまでに成長した要因はどこにあるのでしょうか。

 そんなにはしゃぐほどのことではないでしょう。我々が(最終利益で)商社トップを争うようになったのはここ7~8年のことです。それまでは大きな損を出して、それが解決したらまた大きい損をつくって。社長になる前から「なぜ伊藤忠は大きな問題を繰り返すのか」と思っていました。皆もそう思っていたんですよ。

 だから過去を反省し、教訓にしなければならない。社外取締役や(なりたての)執行役員にも、伊藤忠が今の状態になったのはつい最近のことだと言っています。今朝も1時間かけて意識を共有しました。はしゃいでいると同じことを繰り返しますよ。

もともとの体質なのでしょうか。

 そうでしょうね。2000年、それまでの15年を総括しました。その間の損失額は1兆7000億円で、他の商社の2倍超です。特にバブル期の不動産とファンドトラスト(指定金外信託)の損失が大きかった。

 その後、他社は資源権益に投資したわけですが、我々は無配に転落し、できなかった。(1998年の)ファミリーマートへの出資ぐらいです。その時代の差が、(資源で大きな利益を出している三菱商事や三井物産と比べて)出ているわけです。

 ただ、裏を返すと大きな投資をしなくても経営できるということ。大きな投資をしても、必ずもうかるとは限らない。他社も減損しているし、減損したから(固定費が下がり)もうかっているとも言えます。

資源投資はすべきだった

資源ビジネスは市況に左右され、ジェットコースターのように業績が上下します。資源投資が進まなくてよかったとお考えでしょうか。

 いや、それは負け惜しみであってね。資源が足りない日本においては、良い案件があれば投資すべきでした。先輩が我慢をしながら鉄鉱石などに投資をして、それが利益になっていますが、やはり限られている。

 石油やLNG(液化天然ガス)は大きな投資です。財閥系と違って、売り先となる電力会社とのパイプがない伊藤忠がやるとなると、大きなリスクを伴うわけです。財務が傷み、売り先が十分に確保できない伊藤忠には資源への投資ができなかった。

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