この記事は日経ビジネス電子版に『伊藤忠、日立建機出資の舞台裏 なるか「総合」の再定義』(4月21日)として配信した記事を雑誌『日経ビジネス』4月25日号に掲載するものです。

消費分野で強みを磨いてきた伊藤忠商事が、日立建機への巨額出資を決めた。蓄電池やファミリーマートなど、現場があればそこには新たなニーズ、そして成長の種がある。多様な事業を抱えるだけでなく、デジタルで貫く「総合」へ。商社の価値を再定義できるか。

日本産業パートナーズと共同で約1800億円を日立建機に投じる。伊藤忠商事は北米での販売や物流を支援する
日本産業パートナーズと共同で約1800億円を日立建機に投じる。伊藤忠商事は北米での販売や物流を支援する

 「心強いパートナーがサポートしてくれる」。日立建機の平野耕太郎社長兼CEO(最高経営責任者)は1月14日の説明会でこう強調した。

 伊藤忠商事と投資ファンドの日本産業パートナーズは、日立建機に計約1800億円を折半出資して26%の株式を取得する。日立建機が成長の要と位置づける北米市場で、伊藤忠は主に販売金融と物流で支える。

CITIC以来の議論

 生活消費分野での強さを発揮する伊藤忠にとって、重厚長大分野での多額出資は異例だ。鉢村剛CFO(最高財務責任者)は「投融資の検討段階で、一度差し戻された」と明かす。

 伊藤忠は過去、資源開発や不動産投資で手痛い失敗を経験している。そこから得た教訓は、①高値づかみ②連結利益を増やしたいための投資③主導権を持てない④自分たちが見つけてきたわけではない──案件を避けることだと鉢村氏は言う。

 日立建機の場合、子会社再編を進めてきた日立製作所と日立建機から、日本産業パートナーズを通じて出資の打診があった。日立建機は海外展開で「丸紅と関係が深い」(他商社)こともあり、北米以外では、ほかの商社との協業関係は維持する。

 「他の商社なら出資比率が低く経営を主導できないとみて見送るであろう案件」(商社の投資事業に詳しい関係者)。伊藤忠も③と④に引っかかるためか、「CITIC(中国中信集団)の出資以来の議論が起きた」(鉢村氏)。

 出資を決めた背景には、日立建機が提携を解消した米ディアに代わるパートナーを探していたこと、交渉過程で1株当たりの出資価格が引き下げられたといった背景がある。それだけではない。建設機械業界では、稼働データを活用した予防保全、新車や部品のオンライン販売といったデジタルプラットフォームが競争力の源泉になりつつある。単なる販売担当ではなく、ビジネスモデルの変革を進めるパートナーとして主導権が取れると判断した。

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