この記事は日経ビジネス電子版に『「コツコツ型」伊藤忠、資源依存の三菱・三井 財務で見る商社3強』(4月20日)として配信した記事を雑誌『日経ビジネス』4月25日号に掲載するものです。

資源から食品まで、あらゆる産業分野に根を張り、利益を稼ぐ総合商社。業界トップを争う3社を財務で分析すると、それぞれ違う顔が見えてくる。資源に頼らず、小さな事業を束ねる地味な集団。伊藤忠にはそんな側面もある。

(写真=Shutterstock)
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 伊藤忠商事、三菱商事、三井物産による業界首位争いは、「最終利益」をベースにしている。商社本体の利益に連結子会社や持分法適用会社がもたらす利益、出資先の配当などを加え、税金を差し引いて計算したものだ。

 2022年3月期はそれぞれ8000億円超を計画する異例の高水準での首位争いとなっているが、共通するのが「金属資源」が稼ぎ頭であることだ。

 けん引役は鉄鉱石。伊藤忠も22年3月期は2000億円超を稼ぐとの予想だが、残り2社の事業規模はそれを大きく上回る。

 商社最大の鉄鉱石事業を持つ三井物産は1960年代からオーストラリアで開発を進め、2003年にはブラジルのヴァーレに出資。利益全体の金属資源の貢献度は5割を超える。一方の三菱商事は粗鋼生産に必要な原料炭が得意で、豪英資源大手BHPグループと組んでオーストラリアで原料炭を産出し、世界最大級を誇る。

 両社とも液化天然ガス(LNG)の権益も豊富で、国内の電力会社やガス会社などへ販売している。ウクライナ危機でロシア産のLNG輸入を避ける動きが出て価格は上昇している。両社が参画するロシアの石油・ガス事業「サハリン2」は、岸田文雄首相が「安定供給に貢献しており、撤退しない方針だ」と明言した。

 各社とも資源価格の上昇により金属資源部門の利益が上ぶれるなか、伊藤忠は各部門のバランスのよさで対抗する。PART2で見た「情報・金融」だけでなく、北米で建材を展開する「住生活」、蓄電池や合成樹脂などを扱う「エネルギー・化学品」は1000億円前後を稼ぐ。「繊維」を独立部門として残すのは今や伊藤忠だけ。「第8」はファミリーマートを核とする。

 「その他」にも伊藤忠のポートフォリオの独自性が表れている。15年に6000億円を投じた中国中信集団(CITIC)が象徴だ。伊藤忠が保有する持ち分は10%だが、タイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとの合弁会社が20%保有しているため、CITICを持分法適用会社と認識している。CITICが貢献する利益は毎年700億円ほどと大きいが、配当は伊藤忠の最終利益に反映する額の2~3割にとどまる。会計上の利益貢献額と、配当収入の差額が、伊藤忠の「減損リスク」として積み上がる構図となっている。

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