この記事は日経ビジネス電子版に『伊藤忠、知られざる「デジタル群戦略」 ライバルはアクセンチュア』(4月19日)として配信した記事を雑誌『日経ビジネス』4月25日号に掲載するものです。

伊藤忠商事の今後の成長の鍵は、グループで抱える多様な事業とデジタルの融合だ。そのための「資源」となるのが、さまざまな現場から出てくる多様なデータ。デジタル企業群の構築に乗り出し、「次世代商人道」を突き進もうとしている。

デジタルを活用して、コロナ禍の就職活動をアップデート
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志望者向けに作ったメタバース伊藤忠東京本社。学生に近い内定者が企画に参加した
再現度の高いオフィスを回遊
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海外駐在員に話を聞ける
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SDGsなどの取り組みを紹介
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先輩や内定者の情報も掲載
先輩や内定者の情報も掲載

 新卒学生の採用活動が本格化しようという2月28日、「メタバース伊藤忠商事東京本社」がオープンした。学生は自分の分身である「アバター」を動かし、現役社員や内定者を紹介する執務フロア、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを動画で流すスタジオなどを行き来できる。表紙のイメージは、VR(仮想現実)で忠実に再現した本社1階に立つ「アバター版岡藤正広会長CEO」だ。

 メタバース本社は、この4月入社の内定者によるコンペで勝ち残った案を基に、IT子会社の伊藤忠インタラクティブ(東京・港)が1カ月で完成させたもの。「社員と話せないので社風が分かりづらい」といった学生の悩みを解消する狙いがある。内定者の一人は、「どこまで学生の意見が反映されるか半信半疑だったが、積極的に取り入れられた」と話す。

 資源ビジネスに依存せず、デジタルを成長の柱にする伊藤忠にとり、現場の困り事や課題は利益の源泉となる。現場とデジタル企業群が連携しながら課題を解決し、マーケットを深掘りする。メタバース本社は、データを資源とする「デジタル商人道」の象徴とも言える。それは、既に取引先の現場に入り込み始めている。

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