資本力のある大手が再編を主導する中で、中堅・中小スーパーはどう生き残るのか。激戦を生き抜くには、地域に密着した付加価値の高い経営を目指す必要がある。全国のスーパーの中から、消費者が支持する個性派企業の事例を紹介しよう。

人口2万人近くで高齢化率40%超の過疎地、鹿児島県阿久根市。ここに年間延べ700万人の集客を誇るスーパーがある。24時間営業の「A-Z(エーゼット)あくね」だ。
訪れてみると、店の大きさに圧倒される。東京ドーム3.6個分という広大な敷地にある平屋建ての店舗は、長手方向に200m、短手は100mあり、店の奥行きがかすんで見える。食料品や衣料品、生活雑貨はもちろんのこと、クルマまでも販売している。

一般のスーパーのように売れ筋商品ばかりを取り扱うことはなく、来店客が「欲しい」と望む商品は何でも仕入れる。A-Zを経営するマキオ(阿久根市)の牧尾英二代表取締役は「私は『利益第二主義』ですから」と笑顔で語る。
時折、店員と来店客が会話している場面を見かける。何げない立ち話は商品のニーズが見つかる格好の機会となっている。仕入れの権限が与えられている売り場担当者は、こうした会話から来店客の要望を探り、商品を即座に仕入れる。

1997年の開店当初の商品数は23万点だったが、現在では40万点を超えるまでに増えた。一般の大型スーパーでも8万~10万点といわれ、品ぞろえの多さが目立つ。
年8000台の車を販売
スーパーでクルマを売り始めたのも来店客の要望からだ。公共交通に乏しい地域住民の生活の足はマイカー。「自動車を売ってほしい」との声が増え、2000年から販売を始めた。その販売手法は大胆だ。燃料を満タンにして諸経費を含めた表示価格でクルマを展示。まるで自転車を並べているかのように、店内でクルマを売っている。
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