この記事は日経ビジネス電子版に『1000人調査 社員は「転勤命令」をどう受け止める 懸念は家族』(4月4日)、『70社の人事に聞く「わが社が転勤制度を見直す理由」』(4月5日)などとして配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月11日号に掲載するものです。
PART1では脱転勤に向けた企業の先進事例を紹介した。では、他の主要企業は転勤についてどう考えているのだろうか。日経ビジネスでは今回、日経平均株価を構成する220社を対象に調査を実施。約70社から回答を得た。
調査から浮かび上がったのは、「課題は感じているものの、解決策については手探り」という大手企業人事部の悩める姿だ。
子育てや介護で転勤に難色
まず回答企業の全てが「転勤制度が国内、海外ともに存在する」と回答。そのうえで、現状の転勤制度を維持していくにあたり、課題が「ある」との回答が8割を上回った。具体的な課題や懸念点を聞いたところ、最も回答が多かったのは「子育てや介護といった制約のある社員が増えている」ことで、課題があると回答した企業の9割近くが挙げている。従業員サイドから転勤を否定的に捉える議論について、大手企業側もきちんと認識していることが分かる。
人材確保の点でも、転勤制度の有無が大きく影響しているようだ。「転勤をきっかけとした離職が増えている、懸念がある」と答えた企業は3割あり、長年従事している社員をつなぎ留めるために、転勤制度の見直しが必要な状況が見え隠れしている。さらに、それより多くの企業が「採用の上で転勤制度があることが不利になる」(40.7%、新卒採用・中途採用ともに同率)と回答。魅力的な雇用条件を備えなければ、優秀な人材の採用競争で出遅れかねないとの危機感がうかがえる。競合は大手企業同士にとどまらない。個別取材に応じたある保険会社は「(脱転勤に向けて)仮に全て地域限定社員に切り替えるとしても、今度は競合が地元でブランド力の強い有力企業や地銀になる。全国大手というだけで相対的な魅力を維持できるかどうか」と警戒感を抱いているようだ。
Powered by リゾーム?