この記事は日経ビジネス電子版に『前例なきロシアへの金融制裁 ドル覇権の「劇薬」に』(3月30日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』4月4日号に掲載するものです

経済がグローバル化した今、金融制裁は武力に代わる強力な武器となり始めている。国際決済網排除や資産凍結で通貨ルーブルは急落、ロシア経済は力を失う。だが同時に、制裁はこれまでのドル中心の金融システムを揺るがす「劇薬」でもある。

金融制裁により、保有する外貨準備を凍結されたロシア中央銀行(写真=ロイター/アフロ)
金融制裁により、保有する外貨準備を凍結されたロシア中央銀行(写真=ロイター/アフロ)

 「全面的な経済および金融戦争を行い、ロシア経済を崩壊させる」。これは3月1日、ロシアのウクライナ侵攻を受けたフランスのルメール経済・財務相の発言だ。

 ルメール氏はその後、「戦争」という表現はウクライナ情勢に対するフランスの取り組みと整合が取れていないとして発言を撤回する。だが、ロシアの暴挙を武力で阻止するのではなく、経済制裁や金融制裁をもってやり込めようとする西欧諸国の手法は、第2次世界大戦後に拡大・発展したグローバリゼーションの仕組みを逆手に取った「新しい形の戦争」ともいえる。

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 中でも今回、強力な威力を発揮したとされるのが、国際的な決済システム「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの主だった銀行を排除したことだ。別名「経済の核オプション」とも呼ばれる。国をまたいだ資金のやり取りに必要不可欠なインフラからロシアを締め出せば、ロシア企業は輸出入品の決済、海外からの投資や借り入れが難しくなる。他国との決済ができなくなるため、収入源が絶たれ、経済は弱体化する。

 西側諸国はロシアのSWIFT排除と組み合わせる形で「ロシア中央銀行が保有する外貨準備の凍結」にも踏み切った。ロシアのSWIFT排除決定以降、通貨ルーブルは一時40%以上急落した。急落に歯止めをかけるには、ロシア中央銀行が為替介入をする必要がある。だが、介入の原資となる外貨準備が凍結され自由に動かせないとなると、ルーブル安を阻止できない。通貨安でロシア国内のインフレも加速していく。

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