この記事は日経ビジネス電子版に『米GE初の社外出身カルプCEO、「会社3分割はイージーな決断」』(3月24日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月28日号に掲載するものです。

米コングロマリットの代表格として、日本企業の「手本」となってきたGE。社外出身CEOが2021年11月に3社分割を発表し、世界を驚かせた。株主の圧力に押し切られたのか。真相を聞いた。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=GE)
(写真=GE)
PROFILE

ラリー・カルプ
1963年3月生まれ。米ワシントンカレッジ経済学部卒、米ハーバード・ビジネス・スクール経済学修士(MBA)取得。90年米ビーダールート(後に米コングロマリットのダナハー傘下)入社、2001年にダナハー社長兼CEO(最高経営責任者)就任。14年間でダナハーの売上高と時価総額を5倍にした。18年6月にGE取締役となり、同年10月から現職。

創設から130年。米ゼネラル・エレクトリック(GE)が大きな決断をしました。2023年初頭に医療機器事業を、24年には電力・再生可能エネルギー事業を切り離して、3社に分かれます。本社に残るのは航空機エンジン事業だけです。背景に何があったのですか。

 私がGEのCEOに就任したのは、3年半前の18年10月です。GEにとって激動の時代を乗り越えるために何が必要かを考え、取り組んだのがディセントラライゼーション(分散型経営)でした。

 ビジネスはコーポレート(会社組織)のために存在するのではなく、顧客のためにあるものです。権限をトップに集中させるよりむしろ、それぞれの現場に委ねることで、顧客と真摯に向き合える環境をつくりたいと考えました。

 分割には3つの利点があります。

 1つ目はアカウンタビリティー(説明責任)。各事業部門が独自の取締役会と株式シンボルを持ち、稼いだ収益を「兄弟部門」に奪われずに自らの成長に直接投資できる。新会社を率いるリーダーたちも、大きな組織の1部門だったときに比べて意欲的に自社の財務や成長にコミットできます。(3月10日に開いた)投資家向け説明会では各部門のトップに発表してもらいましたが、すでにその兆候は表れていました。

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