時代や環境の変化に適応できない企業は、いずれ衰退の道を歩む。回避するにはビジネスモデルを問い直し、業態を転換する取り組みが欠かせない。成功企業に共通するパターンは何か。まずは経営学の第一人者と考える。
変化に対応し、業態転換に成功した企業には「型」がある──。こう話すのは、『パーパス経営』などの著書がある一橋大学大学院の名和高司客員教授だ。本誌は今回、名和教授の協力を得て業態転換に成功した企業のパターンを分析した。

1つ目は「オクトパス」。タコの足のように複数の事業を持ち、時代に応じて組み替えていくのが特徴だ。稼げる分野に足場を築いておけば好機をいち早くものにできるが、「新陳代謝が欠かせない」と名和教授は説く。足の数を野放図に増やしていては意味が無い。それぞれの足が勝手に動き出さないよう制御しつつ、時には切り離す決断も必要だ。
軸足となる事業を固定しつつ、もう1つの足を動かして多角化するのが「ピボット」だ。ここで重要になるのが、存在意義を意味するパーパスである。「現場の末端まで夢や志を共有できなければ、いつしか企業の軸が揺らぎ、根無し草になりかねない」(名和教授)。自分らしさとは何か、強さの原点はどこにあるのか。懐古主義にとらわれずに、常に問い続けることが堅固な軸足につながる。
異分子の「新結合」がカギ
3つ目の「クロス」の要諦は、異なる事業を掛け合わせて相乗効果を生み出すこと。流行に乗ってオープンイノベーションを繰り返すよりむしろ、社内に潜んでいる異分子を「新結合させたほうが成功する確率が高い」と名和教授は指摘する。
最後は古くなった殻を脱ぎ捨てて、新たな器に引っ越す「ヤドカリ」だ。時代ごとの最新技術やニーズを取り入れない限り、あらゆるビジネスは陳腐化する。「器よりも中身、つまり顧客に提供する価値を問い続けるのが経営者の仕事だ」(名和教授)
「最近はVUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)と言われるが、それを言い訳にしてはいけない。環境の変化はむしろチャンスだ。世の中がどう転ぶか分からないからこそ、パーパスを定めることが重要になる」と名和教授は強調する。
次ページからは具体的な企業の業態転換事例を基に、成功の「4類型」を見ていこう。
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