会社の存在を脅かす重大な人権侵害であるハラスメント。人権リスクへの対応の遅れは、ビジネスに甚大な影響を及ぼす。投資家の目も厳しくなる中、真のサステナブルな経営の実現は、人権尊重から始まる。

 「11年間放置されたのは、社内の隠蔽体質によるもの。いまだ道半ば。同種事案の再発防止に努める」

 2021年10月、トヨタ自動車の豊田章男社長は、「同社内でパワハラなどを受けて夫が自殺した」などと裁判に訴えていた遺族に謝罪し、社員の業務管理などの徹底を約束した。

 同じく12月、パナソニックは富山県砺波市の同社工場に勤めていた43歳(当時)男性が19年に自殺した事案で遺族と和解した。遺族によると、男性は長時間労働を強いられていたのを苦に命を絶った。同社は自殺に至った一因と認め、遺族に陳謝した。

 2社以外にも三菱電機や電通など、過去にパワハラなどで社員が自殺するケースは、後を絶たない。ハラスメントは極めて悪質な人権侵害であり、人命に影響を及ぼすと肝に銘じなければならないだろう。

 「日本の企業は、環境問題などへの意識は高いが、ハラスメントなどの人権に対する根本的な理解が足りていない」。ビジネスと人権の問題に詳しいオウルズコンサルティンググループの羽生田慶介CEO(最高経営責任者)はこう指摘する。

大手も抜本的な対策に着手

 ハラスメントの撲滅には、社員一人ひとりの意識を根本から変え、底上げしていく努力が不可欠だ。

社員の多様性を受け入れる「DEI経営」を進めるパナソニックの楠見雄規社長
社員の多様性を受け入れる「DEI経営」を進めるパナソニックの楠見雄規社長

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