この記事は日経ビジネス電子版に『先進企業のパワハラ対策に学ぶ、ネットフリックスは撮影前に議論』(3月17日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月21日号に掲載するものです。

企業のパワハラ対策に欠かせない要素は大きく3つある。①経営陣がコミットメントし、②現場に仕組みを導入、それを③継続することだ。奇策は存在しない。愚直に対策に取り組む現場を見てみよう。

(写真=PIXTA)
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 「上司の指導がきつい。『そんなことも分からないのか』と言われるし、自分が話す時もため息をつかれる」

 大阪府に本社を置くパソコン修理大手、日本PCサービスのハラスメント相談窓口に若手社員からこんな相談が寄せられたのは2019年某日のことだ。担当者はメールが届いたその日のうちに通報者へ連絡。通報内容の詳細などを聞く面談の場が1週間ほどで設けられた。その後は被通報者となった上司や周りの同僚への聞き取り、社外の社会保険労務士との対応検討会議などが実施された。

 ハラスメントへの意識が高まっている昨今、「上司の厳しい叱責」と聞くとすぐにパワハラを認定してしまいがちだ。だが、日本PCサービスの事例は詳細な聞き込みの結果、パワハラとは認定しなかった。通報者の若手社員が再三、上司から業務指導を受けていたが勤務態度に改善が見られず、上司側のパワハラであるとは言い切れなかったためだ。

常勤監査役が初動から一気通貫で対応
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●日本PCサービスのハラスメント対応の仕組み
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相談から1カ月で結論

 通報から結論を出すまでの期間はわずか1カ月。しかも対応を一手に担うのはわずか1人だ。PART1で見た通り、厚生労働省の調査では約5割の企業が相談を受けても対応していない事実を考えると、驚くべきスピード対応といえる。