この記事は日経ビジネス電子版に『あなたもパワハラ予備軍かチェック、「グレーゾーン」に気を付けろ 』(3月16日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月21日号に掲載するものです。

ハラスメントは、現実的に線引きが曖昧な上、無数に存在する。それ故、あからさまではない「グレーゾーンのハラスメント」が目下増殖している。そんなあなたはハラッサー予備軍。今こそ、無自覚な自分と向き合おう。

(写真=PIXTA)
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 「『パワハラ? 私がするわけない』と考えている人は、実はしている危険度が高いんです」

 こう語るのは、多くの労働者のパワハラ相談を受けてきた向井蘭弁護士だ。向井氏によると、「部下を『おまえ』と呼ぶ」「自分の机をたたく」「1時間以上説教をする」「相手を泣かせる」といった行動の上司は、パワハラをしている可能性が高いという。

 ハラスメント対策コンサルタントの樋口ユミ氏は、「ハラスメントと感じる範囲は時の流れとともに変わる。10~20年前はOKでも今はNGの例も多い。特に自分が過去厳しい指導を受けた人は部下への指導に注意を払う必要がある」と警鐘を鳴らす。

 法整備などを踏まえ、パワハラへの社会認知度や個人の感受性が高まっており、誰もが意図せず加害者にも被害者にもなり得る。そうした中、職場で暴言・暴力行為をする、あからさまなハラスメント(この章では主にパワハラを指す)は「減っている」(樋口氏)。むしろ、「悪意のないパワハラ」、つまり「グレーゾーンのパワハラ」が増えているのが実情だ。

 もっとも、グレーゾーンのハラスメントは、責任感のある上司がしていることが多いとされ、一概にその行為を否定できない。ただ、無自覚でパワハラをしている可能性があり、事態はより深刻と言える。自分の振る舞いが相手を傷つけていないか、常に気を払う必要があるだろう。

通常のパワハラチェックシート
通常のパワハラチェックシート
出所:人事院「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」から抜粋
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