この記事は日経ビジネス電子版に『いつの間にか「パワハラ大国」のニッポン ハラスメント保険に殺到 』(3月15日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』3月21日号に掲載するものです。

大企業が対象だった「パワハラ防止法」が、2022年4月から中小企業にも拡大する。足元では「ハラスメント保険」が人気で、新たな「XXハラ」も勃興している。日本はなぜ「パワハラ大国」になってしまったのか。

(写真=スタジオキャスパー)
(写真=スタジオキャスパー)

 「企業向けの保険で、ここまで伸びている商品はない」。三井住友海上火災保険新種保険部の岡野晃課長代理は、ある商品についてこう話す。

 その商品の名は「ハラスメント保険(雇用慣行賠償責任補償特約)」。企業が加入し、ハラスメント行為への適切な対応を怠ったなどとして従業員らから損害賠償を求められた場合、賠償金や裁判のための弁護士費用などを賄う。損害保険大手が2010年代から注力し始めている。

 冒頭の発言通り、少子高齢化で国内市場が縮小する中でも「ハラスメント保険」は右肩上がりだ。20年度における損保大手4社(東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険)を合算した契約件数は8万に迫り、15年度に比べて4倍以上に拡大した。大手の担当者は「まだまだ市場の成長余地はある」(あいおいニッセイ新種保険部の可児健太課長補佐)と口をそろえる。

「ハラスメント保険」の需要は右肩上がり
「ハラスメント保険」の需要は右肩上がり
●損保大手4社の契約数

パワハラが「法的」に整備

 見慣れない保険に企業がこぞって加入する背景には、パワハラをめぐる法整備の動きと、新たなハラスメントの増殖がある。

 まずは法整備だ。20年6月に改正労働施策総合推進法(以下、パワハラ防止法)が施行され、「パワハラの定義」が法的に定められた。具体的には、①職場において行われる「優越的な関係」を背景にしている②業務上必要かつ相当な範囲を超えている③労働者の就業環境が害される───の3要件が重なったものが法的にパワハラとして認められる。