ゼンショーホールディングスは2030年まで毎年ベースアップをすると決めている。21年に労使で合意した。30年までは業績悪化による人員整理もしない。外食最大手のトップが、経営を縛りかねない約束をした理由とは。

小川賢太郎氏
小川賢太郎氏
東京大学中退。1982年にゼンショー(現ゼンショーホールディングス)設立。「すき家」「ココス」などを展開する外食最大手となった。小売業や消費者団体などでつくる国民生活産業・消費者団体連合会の会長も務める。(写真=竹井 俊晴)

 世界の中で相対的に見れば、日本経済は沈む一方です。IMF(国際通貨基金)によると、2000年に世界2位だった1人当たりGDP(国内総生産)は24位にまで低下している。再浮上の鍵を握るのはわれわれ流通・サービス業です。なぜならGDPの7割を稼ぎ、就業者の7割が従事しているのが第3次産業だからです。重厚長大な製造業がけん引する経済構造は既に過去のものになりました。

 当社で言えば、00年3月期決算で174億円だった売上高は現在、7000億円近くになっている。およそ40倍の成長を遂げています。デフレ下にあっても、流通・サービス業では、新たな担い手が大きく成長し、世界展開を進めています。

 「食」の代表が当社だとすれば、「衣」の代表はユニクロを展開するファーストリテイリング、「住」の代表はニトリホールディングスでしょう。日本経済の主役となった以上、中長期のマクロ経済政策を考えるのはわれわれの責務です。

 13年から連続でベアを実施してきて、21年には30年までベアを続けることを約束したのには2つの意味があります。まず、マクロ経済を浮揚させるのには賃上げが欠かせません。先述したようにGDPの多くは第3次産業であり、日本経済の根幹は個人消費なんです。

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