政治の積極的な介入を巡っては賛否が別れ、「官製春闘」ともやゆされたが、賃上げを取り巻く停滞ムードを破り、ベア復活を成し遂げた。ただし、限界もあった。安倍政権は3%の賃上げ目標を掲げたものの、実際には15年の2.2%が最高水準で、3%に届くことはなかった。19年からは、当時の日立製作所会長で経団連会長を務めていた中西宏明氏が官製春闘に異議を唱えたこともあって、政権として賃上げ目標の具体的な数字を示すことを見送ってきた。

 「業績が新型コロナウイルス禍前の水準を回復した企業には3%を超える賃上げを期待する」。政権トップとして4年ぶりに賃上げ率に言及した岸田首相だが、賃上げ税制の挫折で出はなをくじかれた。賃上げ率3%まで企業を後押ししていくには、政策としては弱い。政治主導による賃上げは厳しい局面を迎えている。

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この記事はシリーズ「漂流する賃上げ なぜ給料は上がらない」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。