エネルギー多消費型と思われてきた資源・インフラ開発が脱炭素にかじを切る。洋上風力発電に注力する三菱商事はエネルギー効率化を進め、巨額投資も決定。戸田建設も再エネ分野で日本の技術力回復を急ぐ。

4位
 三菱商事 
鉱山開発で再エネ推進 洋上風力も快進撃

<span class="fontBold">世界最大の銅生産量を誇る、チリのエスコンディダ銅鉱山。三菱商事は1988年から参画し、現在は再エネを活用して操業</span>
世界最大の銅生産量を誇る、チリのエスコンディダ銅鉱山。三菱商事は1988年から参画し、現在は再エネを活用して操業

 「温暖化ガス排出削減の取り組みとして、ケジャベコ銅鉱山では操業開始時から全ての使用電力を再生可能エネルギーで賄う」。三菱商事の田中格知常務執行役員(金属資源グループCEO)は、こう強調する。

 この銅鉱山はペルー南部に位置し、2022年内の操業開始予定だ。約750万トンの埋蔵量がある世界最大規模のプロジェクトで、三菱商事は10年前に参画した。

 広大な敷地を重機が走り回る鉱山開発は、エネルギー多消費型事業のイメージがあるかもしれない。しかし、同社は現地で操業する電力会社と契約し、風力発電由来の電気によって鉱石を運ぶベルトコンベヤーなどを動かす。チリ北部のエスコンディダ銅鉱山でも21年から再エネ電力を活用しており、続々とCO2削減対応が進む。

 銅は世界的な脱炭素化に不可欠な物質だ。金属の中で、電気の伝導率が銀に次いで高い。石炭やガスを熱源に使ってきた産業分野でも、「電化」によるエネルギーの効率化が進んでおり、電線の需要は高まっている。電気自動車ではガソリン車に比べ、銅の使用量が3~4倍になるといわれる。

 ただ、需給逼迫によりロンドン金属取引所(LME)では、銅の3カ月先物価格が21年5月に1トン1万747ドル台まで跳ね上がり、過去最高値を付けた。今後、安定供給の必要性が高まるのは必至だ。三菱商事は鉱山の新規開発と温暖化ガス排出削減の両立を図っていく。

グリーン革命に2兆円投資

 三菱商事は今回のランキングで4位。多様な事業を手掛ける総合商社として、どの分野でも脱炭素に取り組む方針が高評価につながった。識者からは「商社業界で最初に環境経営を標榜(ひょうぼう)し、社長の強いリーダーシップの下で実際に脱炭素経営へと俊敏に転換を果たしている」との声があった。

 垣内威彦社長の肝煎りで21年10月に策定したのは「カーボンニュートラル社会へのロードマップ」だ。EX(エネルギートランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)を一体で推し進め、20年度に2530万トンだった温暖化ガス排出(出資比率に基づき計算)を30年度に半減、50年度にはネットゼロを目指す。

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