この記事は日経ビジネス電子版に『トヨタが脱炭素経営1位、EV発表で豊田章男社長の圧巻』(2月22日)などとして配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月28日号に掲載するものです
脱炭素時代に勝ち残るには、事業構造や経営の仕組みを大胆に見直す必要がある。ランキング上位の企業は今、どんな挑戦をしているのか。調査に回答した有識者が注目したポイントを追いながら、脱炭素経営の要諦を探る。
競争条件が大きく変化する脱炭素時代を勝ち抜くためには、事業構造や経営判断の仕組み、ステークホルダー(利害関係者)との関係性など、様々な角度から大胆な変革に挑まなければならない。時代の変化を先取りする幅広で長期的な視野を持ちながら、目の前の現実的な課題にも対処していくというバランス感覚もこれまで以上に求められる。
トヨタ自動車、花王、日立製作所、キリンホールディングスなどの事例から脱炭素経営の要諦を探る。
1位
トヨタ自動車
野心的な目標をトップが発信

「モビリティー分野をけん引するリーディングカンパニーとして、脱炭素戦略に関連したメッセージを経営トップ自らが発信している」
ランキング首位に輝いたトヨタ自動車には、豊田章男社長の発信力を評価する有識者のこんな声が多く寄せられた。自らテレビCMにも出演し、自社サイト「トヨタイムズ」でも脱炭素に向けた熱意や考え方を訴えてきた。異例の3期連続となる日本自動車工業会会長として、脱炭素政策への提言も重ねている。
主要国が2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)を目指して様々な規制・制度を検討し、電動化技術などを武器に参入する企業も相次ぐ。競争環境が大きく変化し、先が見通しにくい脱炭素時代の経営において、トップ自らが情報を発信し、「顔」が見えることがこれまで以上に重要になった。
もっとも、伝えることの難しさを誰よりも強く感じてきたのも豊田氏だろう。トヨタは、ハイブリッド車(HV)や水素エンジン車、CO2と水素の合成燃料「e-fuel」など、様々な技術を持ち、エネルギーインフラの整備状況など各国の実情に最も合ったものを市場投入する「全方位」戦略を掲げる。
「現実的な解」と、市場の多様性や変化に対応できる選択肢を確保する戦略を評価する声が目立った。
初の時価総額40兆円超え
一方で、「重要なのは一日も早くカーボンニュートラルを達成すること。『電動化=EV化』ではない」と豊田氏が全方位を強調してきた結果、「HVに固執し、EVに消極的」との印象が国内外に広まってしまった。実際には、EV開発部を1992年に設置し研究成果をHVにも生かすなど、トヨタのEVのルーツは30年前に遡る。
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