この記事は日経ビジネス電子版に『中田有キーエンス社長が断言、「他社にはまねできない」』(2月17日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月21日号に掲載するものです。

世界中のありとあらゆる工場の自動化を支えるのがキーエンスだ。新型コロナ禍をものともせず、2022年3月期は最高益更新も見据える。逆境に負けない強い風土を作る極意とは。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=行友 重治)
(写真=行友 重治)
PROFILE

中田有[なかた・ゆう]氏
キーエンス社長
1974年生まれ。兵庫県出身、47歳。97年関西学院大学法学部を卒業し、キーエンスに入社。営業畑を歩み、2018年センサ事業部長、19年取締役センサ事業部長兼事業推進部長に。19年12月から現職。

2021年4~12月期連結決算では、売上高と営業利益が過去最高を更新しました。要因は何でしょうか。

 1年前の同時期は新型コロナウイルスの影響で減収になりましたが、この9カ月は売上高が44.7%増と良い結果になりました。国内外で自動化ニーズや生産性向上に対する設備投資が一気に戻りました。

このままなら通期でも過去最高益となりそうですが、業績予想を出していないのはなぜでしょうか。

 環境変化は、読もうと思っても不可能です。新型コロナを誰も予想できなかったですし、こうしたことで一喜一憂するのは、あまり意味がないと考えています。同様に中期経営計画もありません。着実にやるべきことを見極めることの方が大事です。

半導体不足が続いています。キーエンスの代名詞である、受注後の「当日出荷」に影響は出ていないですか。

 あるといえばありますが、他社と比べれば軽微だと考えています。

 特別な「隠し玉」を持っているわけではありませんが、あえて挙げるなら理由は2つあります。

 まずはグローバルで「直販」体制を築いていること。世界中のどの業種で、どれぐらいの設備投資が見込めそうかという情報が、リアルタイムで我々の元に入ってくる。顧客が仕様を決める前からチームに参加することもあり、実際の投資タイミングに先駆けて動向が分かるのです。

付加価値は理解してもらえる

<span class="fontBold">キーエンスは「当日出荷」を何十年も追求し非常時の対応力を磨いてきた</span>
キーエンスは「当日出荷」を何十年も追求し非常時の対応力を磨いてきた

 もう一つは「当日出荷」に対する強い思いですね。営業から生産管理、調達、物流、協力工場に至るまで全力で取り組んでいることが、他社との圧倒的な違いです。これまで多くの危機に直面しましたが、我々は当日出荷にこだわり続け、工夫を積み重ねてきました。見込み生産や在庫の抱え方を何十年も考え続け、トラブル時の対応力もあります。