この記事は日経ビジネス電子版に『ローソンも飛びつくキーエンスのソフト データ分析が次の鉱脈』(2月15日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月21日号に掲載するものです。

キーエンスが工場の「外」に飛び出し、ITベンダーのお株を奪おうとしている。営業活動を効率化するためにデータ分析ソフトを自社開発し、外販も始めた。現場で役立つ生きた経験則を学びたいと、多くの企業が飛びついている。

 京都府内外に132店舗を持つ京都中央信用金庫(京都市)。各店舗からは日々、顧客の膨大なトランザクション(行動履歴)データが集まってくる。年齢や年収で顧客を分類し、誰がいつどれぐらい預金を引き出したか、どのタイミングで借り入れの相談に訪れたかといった情報だ。

<span class="fontBold">京都中央信金は顧客ターゲティングで成果を上げる</span>
京都中央信金は顧客ターゲティングで成果を上げる

 同信金ではこうしたデータを分析。投資信託の販売や融資契約につながった傾向を洗い出し、営業先を絞る「顧客ターゲティング」を2021年から始めた。使うのはキーエンスのデータ分析ソフト「KIシリーズ」だ。

 従来は「勘と経験」に頼った営業だった。「預金が多いから投資信託を買ってくれるだろう」「20~30代の顧客はインターネットバンキングを契約してくれやすい」といった具合だ。だが営業は非効率で、因果関係を説明できない事例も無数にある。

 「データを有効な打ち手に変えるソフトはないものか」。20年夏、営業推進部のメンバーが検討していたところ、一通の手紙が届いた。送り主はキーエンス。同社とは特に取引もなければ、営業担当者との面識もない。首をかしげながら文面を読んだところ、KIの売り込みだった。

 日立製作所や日本ユニシスなど大手ITベンダーからの提案もあった。だが、「(AIの一つ)機械学習に精通していない担当者でもデータ分析ができ、専任のデータサイエンティストが二人三脚でフォローしてくれる。サブスクリプション(継続課金)で使えることがKI採用の決め手になった」と、営業推進部の松本吉弘部長は話す。同信金の担当者自身が分析するため、データが外部サーバーに出ていかない。安全性の面でも軍配が上がった。

次ページ 投資信託の契約数が急増