この記事は日経ビジネス電子版に『セブンが挑むネットと店舗の融合 「一般人禁止」のヨーカドーも』(2月8日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月14日号に掲載するものです。
店舗在庫をスマホで見ながら注文すると最短30分で届けるネットコンビニ。ネット販売専用の配送拠点となる「一般人立ち入り禁止」のスーパー。セブン&アイは新時代の店舗でどのような勝ち筋を描くのか。

1月中旬、札幌市でも年に1度あるかないかの大雪が降りしきっていた日。住宅街にある「セブン-イレブン札幌澄川中央店」のレジ裏に置かれたスマートフォンからけたたましい音が鳴った。スマホを手に取って売り場に出た店員は、画面と陳列棚を見比べながら商品を選択。スマホのカメラ機能でバーコードを読み取ってから商品をカゴに入れていった。
音が鳴ってから十数分たつと、店前の駐車場には白い軽自動車のバンが到着した。悪天候をものともせずにやってきたドライバーは、店員が袋に入れた商品を受け取り、再びクルマに乗って走り出す。行き先はセブン-イレブンに商品を注文した個人宅だ。数分後、店員のスマホ画面で確認できる配達状況が「完了」の表示に変わった。
これはセブン-イレブン・ジャパンが「最短30分でお届け」を合言葉に北海道や広島県、東京都で試験的に提供する「ネットコンビニ」サービスの一コマだ。ネットから店舗の在庫を確認して注文できる。
リアルで取り込めない消費者
「実店舗とネットコンビニの客層は大きく違う」。こう話すのはセブン-イレブン・ジャパンの藤田重人執行役員だ。実店舗は50代前後の男性が主な客層だが、ネットコンビニは30代前後の女性が中心。平均客単価は実店舗が720円ほどなのに対し、ネットコンビニはその3倍程度だ。
購入品目も実店舗はおにぎりや弁当など調理済みの食品が主だが、ネットコンビニでは食材や消耗品などもよく売れる。「実店舗の客層は徐々に高齢化が進んでいる。ネットコンビニはリアルで取り込めていない消費者を獲得できている」(藤田氏)。セブン-イレブンは2月中に対応店舗を主に都内の約1200カ所まで増やし、2025年度には全国の約2万店まで拡大させる計画だ。
近年、世界中で「超即配」競争が過熱している。米国では小売り大手のウォルマートやアマゾン・ドット・コムが食品などの即日配達を手掛けてきたが、配達時間は注文から1~2時間が限界だった。そんな中、30分で食品などを配達する「ゴーパフ」が脚光を集め、「15分」「10分」をうたうスタートアップも登場するなど時短合戦が激化する。
日本でもZホールディングスが22年1月、最短15分で食料品などを配達する事業を始めると発表した。傘下のアスクルが扱う商品を料理宅配大手、出前館の配送網を使って運ぶ。
「10分台」という潮流と比べれば、セブン-イレブンのネットコンビニの30分という配達時間は遅いようにも思える。ただ多くの超即配サービスが小型の倉庫のような配達拠点を一から整備するのに対し、既存の店舗から商品を運ぶ。初期投資を抑えつつ、商品力で差を付けられる。
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