この記事は日経ビジネス電子版に『セブン&アイ井阪社長「変わり続けねば死んでしまう」』(2月4日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月14日号に掲載するものです

新たな成長の原動力を海外に求め、米ガソリンスタンド併設型コンビニの巨額買収を決めた。国内外のコンビニと食品分野の強みを生かし、再び成長軌道に乗せると意気込む。買収に踏み切った理由やグループの成長戦略を語り尽くした。

(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)
PROFILE

井阪隆一[いさか・りゅういち]氏
セブン&アイ・ホールディングス社長
1957年東京都生まれ。80年青山学院大学法学部を卒業、セブン-イレブン・ジャパンに入社。90年からハワイの店舗の再建を担当。商品開発畑が長く、「冷やし中華」の試食で鈴木敏文氏から11度も突き返された経験もある。2002年取締役、07年同商品本部長。09年にセブン-イレブン・ジャパン社長に就任。16年に鈴木敏文氏が退任を表明した後、セブン&アイ・ホールディングス社長に就任。

約2兆3000億円を投じて米ガソリンスタンド併設型コンビニ「スピードウェイ」を買収しました。米連邦取引委員会(FTC)から最終的な承認を得るのに時間もかかりましたが。

 成長の柱にしている事業なので、ここが固まるまで2021年4月に予定していた中期経営計画の発表を延期せざるを得ませんでした。何とか完了し、7月1日にようやく中計を発表できました。

 私たちが持っている成功モデルの一つは、私も現地で再建に当たったハワイです。買収直後の1990年ごろは1日当たりの店舗売り上げが3000ドルほどでしたが、今ではその3倍ぐらいになっています。

 (日本で食品加工を委託してきた)わらべや日洋ホールディングスさんの資本が入っている地場の会社にフレッシュフードの製造をお願いすることになり、その過程で「スパムむすび」というキラーコンテンツが生まれた。それが売り上げを大きく伸ばすきっかけとなりました。

 コアになる工場が地場にあって、現地の人が「このフレッシュフードだったらいいね」と言ってくれるような商品を開発する。そうすればコンビニのパーセプション(認知)が変わると身をもって知ったのです。

 同じようなことを米国本土でもできるはずだと考え、まず2018年に(米中堅コンビニの)スノコLPから1000店規模を買収しました。そして、今回のスピードウェイの買収に積極的に動いたのです。一度諦めかけたこともあったのですが。

FTCで一部の委員が反対して「待った」がかかった時ですか。

 その前です。20年3月ごろですね。その時は競争入札でなく相対での交渉でした。買収価格が妥当なのか、リスクも色々あるということで断念しました。その後で競争入札の話が来て、FA(ファイナンシャルアドバイザー)が妥当な価格を出し始めたので、じゃあ名乗りを上げようとなって20年8月に決まったのです。

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