この記事は日経ビジネス電子版に『あなたの年金大丈夫? 独自試算で見えた減少リスク』(2月2日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』2月7日号に掲載するものです。

老後を支える基礎年金に将来、大幅減となる危機が見えてきた。本誌の試算からは、低収入者は生活がぎりぎりになりそうな実態が浮かび上がる。このままでは、現役ビジネスパーソンにも影響が広く及びかねない状況だ。

<span class="fontBold">岸田文雄首相:年金制度はできる限り横に(職業横断的に)共通化した方がいい時期に来ている。国民年金と厚生年金は財政を一元化、あるいは調整することを考える時期だ。<br>田村憲久・前厚労相:(新たな試算では)かなり基礎年金の水準が上がる。この方向性で年金局に検討させている。ぜひとも実現していきたい。</span><br>注:岸田首相発言は、著書『岸田ビジョン』(講談社)から。田村前厚労相発言は、2021年9月10日閣議後会見<br>(写真=背景:PIXTA、人物2点:共同通信)
岸田文雄首相:年金制度はできる限り横に(職業横断的に)共通化した方がいい時期に来ている。国民年金と厚生年金は財政を一元化、あるいは調整することを考える時期だ。
田村憲久・前厚労相:(新たな試算では)かなり基礎年金の水準が上がる。この方向性で年金局に検討させている。ぜひとも実現していきたい。

注:岸田首相発言は、著書『岸田ビジョン』(講談社)から。田村前厚労相発言は、2021年9月10日閣議後会見
(写真=背景:PIXTA、人物2点:共同通信)

 「経済成長ケースでも将来は所得代替率が50%を割ってしまう恐れが大きいのではないか」

 2021年11月末、ある年金系シンクタンクが催したオンラインシンポジウムで、厚生労働省の幹部が突然、こう語って関係者を驚かせた。「所得代替率」とはいわば年金の受給水準を表すもの。それが、現役時代の半分を下回る危険性に触れたのだ。

現役世代にも影響

 なぜそんな恐れが出てきたのか。実は、政府内ではここ数年、基礎年金の将来的な大幅縮小の懸念が広がってきた。基礎年金が大きく減っていけば、今の高齢者だけでなく、やがて厚生年金を受給する現役ビジネスパーソンまで広く影響が及ぶ。

 厚労省は減少後の具体的な年金給付額を示さず、所得代替率の変化しか公表していないため分かりにくいが、社会の中核世代にも重大な問題といえるだろう。

何もしなければ低年金者激増の危機が現実に
●公的年金の将来の給付水準と追加改革による厚労省の見通し
<span class="fontSizeL">何もしなければ低年金者激増の危機が現実に</span><br />●公的年金の将来の給付水準と追加改革による厚労省の見通し
注:①は2019年財政検証のケースⅢ、②は同ケースⅤで、厚労省が試算したもの。所得代替率は、年金受給開始時(65歳)の年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)の何%程度かで年金の水準を示すもの。「今の年金水準」は財政検証時の所得代替率。厚生年金の報酬比例部分(2階部分)と基礎年金部分(全加入者共通の1階部分)を合計したもの。「今のままでは…」は、現行のままで進むと将来基礎年金が大きく減ることを示す。「追加改革…」は厚労省の20年末試算に基づいて改革を実施した場合。いずれも出生、死亡とも中位推計。出生が低位推計になれば、代替率はまた低下する。20年末の厚労省の追加試算はこれ以外に、基礎年金を45年加入にするものもある
出所:厚生労働省20年末の追加試算を基に本誌作成
[画像のクリックで拡大表示]

 上の図は、それを示したものだ。まず左端は、現在の厚生年金の給付水準。そして中央が、このまま行くと給付水準が将来どうなるかを表したもの。問題はこの中央である。

 所得代替率は、夫が40年間会社員で、妻はその間、専業主婦という夫婦の場合で示している。中央の見通しは経済環境によって異なり、「経済成長と労働参加が進む」ケースでは、基礎年金部分の所得代替率は19年度の36.4%から46年の26.5%へと現在より約3割減る。「経済成長と労働参加が一定程度進む」というやや悲観的なケースでは減少率はさらに大きく、約4割減ることになる(共に複数試算の一つ)。