30年以上前から教育部隊

 高い愛着を生み出す要因には、パートを含めた従業員の教育にもある。「私の顔を覚えて話しかけてくれるの。また行こうって気になるわ」。札幌市在住の永田静子さんは、いつも同じ店を訪れる理由をそう話す。

 セイコーマートでは社員だけでなく、パートナーと呼ぶパートやアルバイトの従業員も採用時や一定期間ごとに本社や道内の拠点に集めて研修を行う。研修内容はレジ打ちや品出しといった店舗での作業だけでなく、接客の仕方が中心だ。

 1971年に1号店を開いた同社は30年以上前から教育部隊を編成している。研修でパートナーの店への愛着度が高まるという。勤続年数が長くなれば、顧客にとって顔なじみの店員となり、店への愛着度が増す。

 丸谷氏は「我々はお客様の信頼が欲しい。それが安定した業績につながるはず」と語る。20年のコンビニ大手7社の売上高は10兆6608億円と前年を4.5%下回る中で、セコマの売上高は1837億円と1.4%増えた。地域に根差してきた結果が、NPSにも業績にも表れている。

10.テーマパーク
TDR貫禄、西武園反転 世界観の作り込み鍵
(写真=©Disney)
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 10位まですべてプラス、9位まで2桁のスコア。今回の調査でNPSが突出して高かったのが、テーマパークだ。首位の東京ディズニーリゾート(TDR)に至っては推奨者の割合が6割を超える。コロナ禍でなお、根強いファンに支えられていることが、数字で示された形だ。

 TDRと2位のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に共通しているのは、世界観の作り込みだ。莫大な予算をかけて拡張に拡張を重ね、魅力的なアトラクションを次々と投入。常に新しい体験を提供することで、集客力を高めてきた。特にTDRは「夢の国」と称されるように、足を踏み入れただけで非日常感を味わえる。それが2度、3度と足を運ぶリピーターを生み出している。

Z世代取り込む昭和の風景

 スコアで見劣りするが、注目したいのは西武園ゆうえんち。一度でも来園したことのある人のNPSはマイナス48.0だったが、そのうち過去1年間の来園者に絞ると、プラス14.9に反転する。原動力はリニューアルだ。21年5月、昭和の街並みを再現した商店街を新たな「顔」に据えた。

 テーマは1960年代の日本。若者には新しく、シニアには懐かしい。そんな世界観を打ち出し、10~20代のZ世代も取り込んだ。背景には明確な戦略がある。オープン半年前にマーケティング部を新設。USJを再生した森岡毅氏率いる刀(大阪市)と組み、総額100億円を投じて「古さを生かす」作戦に出た。マーケティング部の高橋亜利課長は「心あたたまる幸福感をしっかりと表現できた」のが好調の要因とみる。開業後も定期的に来園者からヒアリングを重ね、満足度の推移を追っている。

 西武グループは既存のファンと向き合う姿勢を鮮明にしている。西武ライオンズでは2018年から球団経営にNPSを導入し、試合日ごとにスコアを調べている。西武ホールディングスはグループ各社を横断したマーケティング組織をこれから立ち上げる予定だ。黙っていても客が来る時代は終わった。ファンとの距離をいかに縮めるか、模索は続く。

日経ビジネス2022年1月31日号 26~29ページより

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