
2021年11月中旬、上海市内の路上では、テーブルの上に赤い箱が置かれ、近隣住人と思しき数人が集まっていた。
5年に1度実施される、上海市内の行政区の議会に当たる人民代表大会の選挙だ。区の人民代表は上海市の代表を選び、上海市の代表は毎年3月に開催される全国人民代表大会(全人代)の代表を選ぶ。

共産党による一党独裁が続く中国。厳密には中国共産党以外の政党もあるが、すべてが共産党の指導下にあるため実質的な意味を持たない。そんな中国にも実は直接選挙がある。
上海市の選挙担当者は「投票率は9割を超える」と胸を張る。投票できるのは事前に有権者登録を済ませた人のみで、当日の投票が難しくても取りまとめ役に投票を委任することが可能なため投票率は高くなる。

街中には投票を呼びかけるポスターが散見されるが、関心を払う人はほぼいない。自らの選挙区で誰が立候補しているのかといった基本情報を探すことも困難だ。今回も人権活動家の立候補が認められないといったケースが中国各地で判明している。「意味がない」と多くの中国人が口をそろえるゆえんだ。
欧米や日本から見れば滑稽にも思えるだろう。だが、中国共産党と政府は作り上げてきた仕組みに自信を深めている。

「西側の民主モデルをまねるのではなく中国式民主を作り上げた」「ある国が民主的か否かは、その国の人々が判断すべきだ」
中国政府は21年12月4日、中国の「民主」を自画自賛する白書を発表した。翌5日には「米国の民主の状況」という文書を発表し、「独特で普遍的ではなく完璧にほど遠い」と、前日に自ら否定したはずの他国批判を繰り広げた。米バイデン大統領が同9~10日に開催した、西側諸国を招いた「民主主義サミット」開催に照準を合わせたものだ。
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