この記事は日経ビジネス電子版に『破綻相次ぐ学習塾、お金の「持ち逃げ」も 中国教育改革のその後』(2021年11月12日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月17日号に掲載するものです。

統制強化で揺れるのはPART2で見た不動産業界だけではない。社会主義的価値観への揺り戻しにあらゆる業界が戦々恐々としている。極端な価値観の変更は経済成長の原動力を破壊しかねない。

(写真=新華社/アフロ)
(写真=新華社/アフロ)
文化や経済の統制強化が顕著に
●最近の主な統制強化の事例
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習近平氏は統制を強化。学習塾は非営利化(中)、インフルエンサーの薇婭氏は脱税で処分を受けた(上)(写真=上:AFP/アフロ、下:アフロ)
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 脱税による追徴課税と罰金で、13億4100万元(約239億円)。2021年12月20日、中国税務当局が発表した有名インフルエンサーに対する処分に、電子商取引(EC)業界は震え上がった。処分を科せられたのは「直播(ライブコマース)の女王」と異名を取る薇婭(Viya、本名は黄薇)氏だ。

 19年から20年にかけて虚偽申告により6億4300万元(約114億円)を脱税し、その他の支払われるべき税金6000万元(約11億円)が未納だったという。薇婭氏は即座に謝罪して資金をかき集めて納付することを表明したが、ECサイトの店舗やソーシャルメディア上のアカウントは凍結されており今後の活動に支障を来すことは確実だ。

 中国ではECサイトのライブ中継で商品を売り込むライブコマースの存在感が際立っている。

 薇婭氏は、最近中国政府から締め付けられているアリババ集団と密接な関係にあることで知られ、21年の「独身の日」関連イベントでは予約販売が始まった10月20日だけで82億5200万元を売り上げた。同イベントで売り上げトップだった「口紅王子」李佳琦氏と並ぶ代表的なインフルエンサーだ。

 浙江省消費者権益保護委員会は12月23日、問題のある商品を扱っているとして「淘宝網(タオバオ)」「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」「京東」「快手」「抖音」といったEC事業者だけでなく李佳琦氏などのインフルエンサーを指導した。ECで商品を売る企業にも影響は及んでおり、ある消費者向け製品を手掛ける日系メーカーの経営者は「インフルエンサーを使ったライブコマースは当分控えることを決めた」と話す。

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