この記事は日経ビジネス電子版に『テスラ、トヨタも 「米中分断」の嘘、衰えない中国への投資』(1月7日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月17日号に掲載するものです。
中国の台頭で米国との対立は先鋭化し、地政学的な分断が加速している。だが、民間経済におけるお金の動きはその逆の流れを示している。矛盾をはらみながら成長を続ける巨大市場にどう向き合うべきか。

米国政府による北京冬季五輪・パラリンピックの外交的ボイコット、新疆ウイグル自治区の人権侵害を理由にした中国企業への制裁、同自治区からの産品輸入を禁止する法律の成立──。中国の習近平指導部は国内においては企業などへの締め付けを強めている。また、米国を中心とする西側諸国からの圧力に対しては強硬な姿勢を貫いている。米国がバイデン政権になってからも米中対立に雪解けの気配はなく、デカップリング(分断)が進んでいるというのが一般的な認識だろう。
だが、データからは逆の動きが進んでいることが見えてくる。米国からの中国への投資は2021年も着々と積み上がっており、米中間の貿易の金額は前年比2割増のペースで推移している。
その中でも米中間の取引が活況を呈しているのが、対立の焦点となっているはずの半導体産業だ。
21年11月に上海で開催された第4回中国国際輸入博覧会。習国家主席が始めた国家級のイベントだ。コロナ禍の中、厳戒態勢で実施された博覧会に出展した米国企業は約200社と過去最高だった。
半導体関連では半導体製造装置最大手のアプライドマテリアルズのほか、ラムリサーチ、クアルコム、テキサス・インスツルメンツなどがずらりと顔をそろえ、建機世界最大手のキャタピラー、ゼネラル・エレクトリック、ハネウェル、ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザーなども大規模ブースを構えていた。
半導体製造装置各社の担当者は「中国の半導体市場の投資の勢いはすごい。このチャンスを逃すわけにはいかない」と口をそろえる。米国の半導体業界はトランプ前政権時代から、中国への輸出規制に反対していた。
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