習近平国家主席の下、中国が強権的な姿勢を強めている。米国との対立は深まり、北京冬季五輪は外交上の駆け引きの場となった。国内では社会主義への回帰を打ち出し、企業などへの統制を強化している。資本主義を批判した文化大革命の再来とも言える「新文革」が始まったのか。コロナ禍で見えにくくなった中国の今を追った。(写真=AFP/アフロ)

(上海支局 広岡 延隆)

文化大革命(文革)とは?

 中国建国の父、毛沢東による政治運動。大躍進政策の失敗で一線を退いた毛沢東が、政治復権を狙い発動した。1966年から始まり76年に毛が死亡、77年に終結宣言がなされた。市場経済などを導入しようとした劉少奇や鄧小平らを「走資派」と呼び、失脚させた。

 毛を慕う若者らが「紅衛兵」として「造反有理(謀反には道理がある)」のスローガンを叫び全国の文化財を破壊。各地で知識人、旧地主の子孫などを反革命分子と決めつけ暴力的につるし上げた。

 紅衛兵の暴走に歯止めが利かなくなったため、毛は「下放」を提唱し若者を地方農村に送り込んだ。習近平国家主席も陝西省延安市の梁家河に下放され、肉体労働をしながら洞窟で暮らした経験を持つ。

 復権した鄧小平は81年、「文革は指導者が誤って引き起こし、反革命集団に利用されて、党と国家と人民に重大な災難をもたらした内乱」と総括した。

 現在、習国家主席が進めている「共同富裕」などの施策は、行き過ぎた市場主義の修正や文化統制といった側面が見られるため、文化大革命との類似を懸念する声もある。

CONTENTS

PROLOGUE
北京五輪の内憂外患
交錯する中国の自信と不安

PART1
衰えない中国投資
統計から見える米中対立の真実

PART2
恒大集団創業者、激動の半生
危機続く中国不動産企業

PART3
狙われる塾、ゲーム、インフルエンサー
統制強化は経済を「殺す」か

PART4
社会主義回帰に負けない
統制下でも成長狙う中国企業の「対策力」

EPILOGUE
実は中国にも直接選挙はある
経済的繁栄巡り強権の裏で綱引き

日経ビジネス2022年1月17日号 8~9ページより目次