誤解を恐れずに言えば、我々は若者や起業家に「いかがわしくあれ」と言っているぐらいなんです。世の中が「立派な会社だ、安心な会社だ」と思うころには、成長しない成熟した会社になってしまう。ですからまだまだ僕も、いかがわしくありたいと思っているんですよね。

 決算発表で「冬の大嵐の真っただ中」と表現したように、毎日が春では決してない。常に挑戦し続けて、少しはらはらどきどきするくらいがドラマがあって楽しいと思うんですけど(笑)。

<span class="fontBold">2021年11月の記者会見では「嵐の中でも新たな芽を育てる」と発言した</span>(写真=朝日新聞社)
2021年11月の記者会見では「嵐の中でも新たな芽を育てる」と発言した(写真=朝日新聞社)

「冬の嵐」には中国での逆風も含まれると思いますが、今後の中国市場をどう見ていますか。

 中長期で見れば中国と米国がAIの2大勢力だと思うんですね。ただ、新たな規制の波がどの範囲、内容になるのかはよく分からない部分があり、慎重に検討しなきゃならない。

 我々は中国での投資をやめたわけではなくて、今でも毎日のように投資活動は続けています。よりスタートアップに近い規模やBtoB(企業間取引)、メディカル分野などで、中国政府がセンシティブだと思う範囲をできるだけ避けるような形で投資を続けています。

 我々も資金が無限にあるわけじゃありません。米国は継続して急成長していますし、インドやインドネシア、欧州、ラテンアメリカなど世界中でAIのユニコーン軍団が、ちょうどインターネットの揺籃期のような形で毎日生まれていますから、そういうところに資金を優先的に回していくということが今起きています。

世界のリーダーたちと付き合えるのは、日本というバックグラウンドも関係していますか。

 今、米中間にはいろいろな緊張感があります。中国の資本家は米国の会社にほとんど投資ができず、米国の会社も中国への投資はしにくくなると思います。そういう観点では、僕が日本で生まれ育ったというのは幸運なのかもしれません。比較的バランスよく世界中に投資することができる立場にあるというのは恵まれていることかもしれません。

投資の仕組みについて。「金の卵を産む産業」だと以前から話していました。この仕組みはいつごろからできてきたのでしょうか。

 ビジョン・ファンドを開始してからです。それまでは僕の趣味の範囲で投資をやってきました。ビジョン・ファンドの形をつくりたいという思いはずっとあったんですが、先立つ資金や経験が十分じゃなかった。

 ブロードバンド事業の「Yahoo! BB」を始めたら真っ赤っかの大赤字で、それを何とかしなきゃいけなくなった。さらに日本テレコムを買って、米携帯通信のスプリントまで買ってということになると、そっちを成就させなきゃいけないから忙しかったし、資金もだいぶ取られていました。それらがやっと落ち着いてきたので、ビジョン・ファンドを本業として、完全にシフトする意思決定ができたわけです。

内部では15年ぐらいの長期計画を持ち、頻繁に修正していると聞いています。

 これまであまり外には言ってきてないのですが、15カ年計画というのがあり、それを毎週見直しています。そもそも、15カ年計画を本気でつくっている会社は世界中にもあまりないと思います。仮にあったとしても、社長が自ら毎週見直している会社は1社もないんじゃないですかね。

 経営企画部が1年ぐらいかけてつくった5カ年計画があっても、いざ出来上がったら満足してしまって、見直したり作り直したりする情熱がトップになくなってしまうのだろうと思いますね。2~3年たってかなりずれてしまっても、なかなか修正しない。僕に言わせれば当然のことなんですけれども、それをやっている会社はほとんどないと。

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