この記事は日経ビジネス電子版に『孫正義氏インタビュー「未来をつくるため、いかがわしくあり続ける」』(1月1日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月10日号に掲載するものです。
ソフトバンク起業から40年、300年企業への道のりはまだ始まったばかりという。業績は「冬の嵐」の真っただ中だが、資本家として人類の未来をつくる決意は揺るがない。「60代引退宣言」も撤回し、当面は最前線に立ち続ける。
(聞き手は 本誌編集長 磯貝 高行)

孫正義[そん・まさよし]氏
ソフトバンクグループ会長兼社長
1957年8月、佐賀県鳥栖市生まれ。64歳。81年、日本ソフトバンク設立。96年ヤフー社長、2006年ボーダフォン(現ソフトバンク)社長、13年米スプリント会長に就任。17年、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立し、世界のAI関連企業に投資する。同年から現職。21年ソフトバンク創業者取締役。
ソフトバンク・ビジョン・ファンド創設から5年、人工知能(AI)のユニコーン群をつくる「群戦略」の達成度は何合目ぐらいでしょうか。
まだ1合目ぐらいですかね。始まったばかりです。ビジョン・ファンドの投資先だけで約400社、それ以外にもソフトバンクやヤフー、PayPayなど以前からある日本の会社も含めると、お互いに切磋琢磨したり、協力し合ったりというシナジーが生まれ始めているのではないかなと思いますね。
2021年の株主総会で、「情報革命の資本家になる」と表現しました。その真意はどこにあるのでしょうか。
ソフトバンクを「投資を中心とした企業に変えていく」と宣言してから3~4年たちます。説明が長くなるので「投資会社になる」と表現してましたけど、僕は投資家でなく資本家になりたいと思っていました。
投資家と資本家は決定的に違います。投資家にとっては、いかに安く買って高く売るかが唯一の正義でありゴールだと思うんですね。一方、資本家はお金ではなくて未来をつくる。
ジェームズ・ワットやトーマス・エジソン、ヘンリー・フォードなどの発明家、起業家が産業革命をけん引しましたが、彼らとビジョンを共有しリスクを取ったロスチャイルドのような資本家がいた。日本でも幕末や明治維新のころは三井や三菱、渋沢栄一などの資本家が新しい会社をどんどん興していきました。
そうして両輪で未来をつくりにいった結果、人類に有益な結果を生み出したんだろうと思うんです。AI革命の担い手である起業家、発明家とビジョンを共有して、人類の未来をつくりたい。それが我々のゴールであり正義なんです。
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