この記事は日経ビジネス電子版に『 「今は自由演技。撃ち方やめもできる」 ソフトバンクG・後藤CFO』(1月6日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』1月10日号に掲載するものです。

世界で類を見ない巨大ユニコーン投資ファンドの「財布」をどう切り盛りするか。ファンドからの分配が増え、流動性の高い資産を抱えることがポイントという。

<span class="fontBold">後藤芳光[ごとう よしみつ]氏</span><br>ソフトバンクグループ専務執 行 役員最高財務責任者 (CFO)<br>1987年一橋大学 社会学部卒業、安田信託銀 行(現みずほ信託銀行)入 行。2000年にソフトバンク に入社し財務部長に。プロ 野球チーム「福岡ソフトバン クホークス」の社長(オーナ ー代行)も兼務。(写真=村田 和聡)
後藤芳光[ごとう よしみつ]氏
ソフトバンクグループ専務執 行 役員最高財務責任者 (CFO)
1987年一橋大学 社会学部卒業、安田信託銀 行(現みずほ信託銀行)入 行。2000年にソフトバンク に入社し財務部長に。プロ 野球チーム「福岡ソフトバン クホークス」の社長(オーナ ー代行)も兼務。(写真=村田 和聡)

 私たちはユニコーンに特化した分散投資を実現した初のケースではないか。基本的に間もなく上場するというレイトステージ中心の投資なので、成功確率はほかのベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティーより高くて当然。ユニコーンのレイトステージ投資は成功確率が高い分、(1件当たりの投資)金額が大きい。普通のファンドは数百億円とかせいぜい1000億円ぐらいの規模なので、組み込めるユニコーンの数は限られる。私たちが実現できたのは規模の論理だ。

 また、セコイア・キャピタルやタイガー・グローバル・マネジメントなどのVCとの一番の違いは、基本的に自己資本で運用している点だ。

 2021年の4~9月に約3兆円を投資したが、そのうち約1.5兆円の原資はソフトバンク・ビジョン・ファンドと(上場企業株を運用する)SBノーススターの分配。このほかアリババ集団株を使ったファイナンスが約1兆円で、残り5000億円は通常のファイナンスや手元流動性で十分消化できる。

 これが可能なのも、もともとアリババ株などの非常に安全で流動性が高いアセットがあったから。そうでなかったら、多くの投資家から資金を集めた他人資本を中心としたファンドの形になっていただろう。

 安全な財務比率で運営できる限りは「自由演技」ができる。製造業なら莫大な設備投資が必要で、何万人、十何万人も従業員がいるので何もしなくても費用がかかる。投資会社はそれがない。(ファンドからの分配が)減ってくれば、投資を縮めればいい。

 CFOの立場からすれば、収入がないなら「撃ち方やめ」と言う。手元流動性がどんどん悪化する状態にはできない。ただその状態はいつまでも続くわけではないだろう。「この四半期は体力温存」「次の四半期からまたエンジン全開」というふうに、うまくギアチェンジしていけばいい。

自らの投資スタイルを追求

 仮にIPO市場が停滞する10年不況みたいになったとしても、撃ち方やめではない。起業家はマーケットの状況によらず次々生まれる。新規案件の仕込みの時期になるだろう。リーマン・ショックの際も、半年後には起債できた。ソフトバンクGは2年分の償還資金を確保するルールを守っており、安全といえるだろう。