この記事は日経ビジネス電子版に『「ガリガリ君」安さ追求への執念 10円の値上げ、議論は2年越し』(12月15日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』12月20日号に掲載するものです。

 「値上げはぜんぜん考えぬ」
 「値上げの時期は考えたい」
 「近く値上げもやむを得ぬ」

 フォークシンガーの故・高田渡さんの楽曲、「値上げ」が流れる中、神妙な面持ちの社長と社員が一斉に頭を下げる──。2016年4月、アイス専業メーカー、赤城乳業(埼玉県深谷市)のおわび広告が話題を呼んだ。

<span class="fontBold">ガリガリ君の値上げを伝える赤城乳業のテレビCMの一場面。大々的に値上げを取り扱ったのは異例で、海外メディアにも取り上げられた</span>
ガリガリ君の値上げを伝える赤城乳業のテレビCMの一場面。大々的に値上げを取り扱ったのは異例で、海外メディアにも取り上げられた

 ユーモアいっぱいのおわび広告を出した理由は、看板商品である「ガリガリ君」の価格を、25年間据え置いてきた60円から70円に変えたからだ。原材料価格や物流費の高騰に直面し、「ほぼ利益が出ないくらい、ギリギリまで我慢しての値上げだった」と、同社の萩原史雄マーケティング部長は振り返る。「10円値上げするために、2年以上も議論した。こんな会社は他にないだろう」

「値上げは最終手段」

 それほどまでに値上げを避けようとしたのには、2つの理由がある。一つは、過去の苦い経験だ。1979年、オイルショックの余波で当時の主力商品「赤城しぐれ」を30円から50円に値上げした。すると売り上げが激減。会社が危機にひんするほどの打撃を受けた。社内には「値上げは最終手段」という教訓が根付いた。

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