この記事は日経ビジネス電子版に『LIXIL社長が憂う"貧しいニッポン" 雑巾絞りの成功体験と決別を』(12月9日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』12月20日号に掲載するものです。
世界経済の正常化でモノの需要が一気に膨らみ、原材料価格や物流費を押し上げている。乾いた雑巾を絞るようにただコストを削るだけでは企業も働き手もいずれジリ貧になってしまう。「コストを下げてもうける発想と決別しよう」。大手企業を率いる一人の経営者が声を上げた。
「日本企業が当たり前のように調達できた部品や素材が買えなくなるかもしれない」──。危機感をあらわにするのは、住宅設備機器・建材メーカー大手、LIXILの瀬戸欣哉社長兼最高経営責任者(CEO)だ。新型コロナウイルス禍からの経済正常化で、あらゆるモノの需要が一気に高まった2021年。様々な原材料の価格が上昇している。LIXILの主力製品、サッシに使うアルミニウムの価格はこの1年で50%以上上がった。水回り製品やドア、フェンスなど製品全般に使用される鋼材や、水栓金具の材料となる銅も歴史的な高値水準にある。
物流コストも上昇した。中国から欧米に運ぶ物資が増え、コンテナの手当てがつかない。運賃は一時、コロナ禍前の約5~6倍まで跳ね上がった。コンテナ不足のみならず、燃料価格の上昇、船から積み荷を降ろす作業に携わる人員の不足もコスト増に拍車をかける。

瀬戸氏は「コストアップは一時的なものでなく、長期に向き合わなければならない課題」と考える。アジアやアフリカなどの新興国の生活水準が上がり、世界であらゆる物資の需要が膨らんでいるためだ。
調達コストを最小化しようと世界中の企業が調達網を見直したことで、買い付け先が1カ所に集中してしまう問題も以前より増えた。売り手の立場が有利になり、買い付け価格の上昇が起こりやすくなっている。
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