ガムガム側ではどんな解析が行われているのか。実際に、ダッシュボードをのぞいてみた。アクセスと同時にタイトルや写真、媒体名を読み取り、ページ内のキーワードを瞬時に抽出する。キーワードは個別にスコア化され、重みづけがなされている。よりスコアが高いキーワードに関連した広告が出る仕組みだ。

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 記事の内容に応じて自動的にカテゴリーを分け、NGワードが含まれているかもチェックする。「クレジットカードの不正利用に関する記事であれば、広告が表示された時点で企業イメージが低下してしまう。ネガティブな記事には広告配信されない仕組みがあるのはありがたい」。三井住友カードマーケティング統括部の久保拓也氏は、そう実感を込める。

 ガムガムは17年に日本法人を設立した。現在、270ほどの国内媒体に広告を配信している。広告主は当初、外資系企業が多かったが、最近は日本企業の利用が増え始めた。

外部提供の「拒否権」も検討

 日本でも個人情報をめぐる規制は厳しくなっている。22年4月に施行される改正個人情報保護法では、ユーザーの閲覧履歴の外部提供が制約される。総務省はさらにサイト運営者に対して、閲覧履歴の外部提供を利用者がストップできる「拒否権」の実装を義務付けることを検討している。閲覧履歴や追跡に頼らない技術は今後ますます重要性を増す。

 富士フイルムホールディングスも21年夏から、実験的にガムガムを使い始めた。「興味に合った内容が配信されるからか、広告をクリックした上で、ウェブサイトの中身まで深く読み込んでもらえる傾向がある」。コーポレートコミュニケーション部の佐藤義信氏はそう語る。

ツルハは広告事業に参入

 2つ目の策は自社の顧客基盤の拡大。プラットフォーマーに頼らずとも、伝えたい情報を自社の顧客に届けられる仕組みを整えるのがカギだ。

 化粧品大手のオルビスは、未来の肌状態をシミュレーションする独自コンテンツなどを自社アプリに集積することで、新規会員の獲得につなげている。現在60万人ほどの月間利用者数を、早期に100万人に引き上げる狙いだ。アプリの利用者が増えればプッシュ通知などを通じて、外部広告を打たずとも顧客と接点を持ち続けられる。

<span class="fontBold">オルビスはアプリを核としたビジネスモデルへの転換を進める。未来の自分の肌と出合えるといった独自コンテンツを配信し、会員を増やすべく移動型店舗も稼働させた</span>
オルビスはアプリを核としたビジネスモデルへの転換を進める。未来の自分の肌と出合えるといった独自コンテンツを配信し、会員を増やすべく移動型店舗も稼働させた

 21年11月には「オルビスワゴン」という名の移動型店舗も始めた。ワゴンではメイクなどのカウンセリングが受けられる他、アプリの会員登録もサポートする。千葉県を皮切りに展開エリアを広げていく計画だ。

 年間1200万~1300万人の会員が店舗で買い物をするというツルハホールディングスは、自社のデータを活用して広告事業に参入した。「どうやって顧客に情報を伝えるかを考えたら、自らデジタル広告の世界に入っていくしかないと思った」と小橋義浩経営戦略本部長は振り返る。

 ID-POS(販売時点情報管理)にひも付く来店客の購買データと、アプリなどの会員情報を活用して「ツルハADプラットフォーム」を構築。20年8月からインスタグラムやユーチューブ、ツイッターなどに新商品などの広告配信を始めた。化粧品や日用雑貨のメーカーを中心に広告主を獲得し、既に年間数億円規模の事業に成長しているという。

 全国に多くの実店舗を持つからこそ、広告がどれだけ閲覧されたかにとどまらず、閲覧者の何%が来店し、何%が購入したかといった広告効果まで測定できる。そこに魅力を感じてメーカーはツルハに広告を出す。膨大な顧客データを持っている企業は、その蓄積を生かして広告プラットフォーマーにもなれることを、ツルハの例は示している。

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