この記事は日経ビジネス電子版に『「推しアイドル」も「引っ越し先」も、グーグルは全てお見通し』(11月30日)、『ワタシの情報はどこまで拡散? iPhoneログ解析で見えた経路』(12月9日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』12月13日号に掲載するものです
GAFAを中心とした巨大IT企業は様々な手段で膨大なデータを収集する。その一端をつかもうと、記者は専門家の力を借りてネット上の「ワタシ」の実像を探った。それでも底知れぬ情報流通の世界。個人のデータを燃料に資本主義は拡大を続ける。
「あなたの名前はタカオヤスアキ、男性で20代ですね。ご自宅は東京都××区●●の▲▲というマンションで、以前住んでいたのは……」
プロフィルを言い当てられるたび、記者T(29)の顔はどんどん青ざめていく。パソコン画面越しに話しかけてくるのは初対面の男性だ。
PART1で見たように、GAFAはあらゆる情報を集めている。一方で消費者からは、自分のデータがどう活用されているかが見えづらい。
ならばGAFAからデータを取り寄せて、ネット上の「ワタシ」がどんな姿をしているのか、専門家に分析してもらおう。協力してくれたのが、データサイン(東京・新宿)の太田祐一CEO(最高経営責任者)だ。

Tは「Googleデータエクスポート」で取得したファイルを、事前に太田氏にメールしていた。アカウント保有者なら誰でもダウンロードできる、グーグルのサービス上の行動履歴データだ。今回は40種類以上ある情報のうち、10種を渡した。データサイズは46.7MB。高画質な写真数枚分だ。
こんな小さなデータから、太田氏はどうやってTの自宅マンションを読み解いたのか。カギは2つある。
まずはウェブブラウザーの「クローム」や、スマートフォンOS(基本ソフト)「アンドロイド」で活用する「自動入力」機能のデータだ。
もう一つは地図サービスの「グーグルマップ」。Tはアプリ起動時以外はスマホのGPS機能の作動を許可していない。仕事柄、どこに立ち寄ったか記録を残したくないからだ。
盲点だったのは、家を出る前や帰宅時に地図アプリを起動して目的地までの所要時間を調べる習慣があったこと。太田氏はここを見逃さず、自宅の位置に加え、日々の行動履歴まで大まかに把握した。Tは2021年5月に引っ越したが、その前後の住所がバレた理由もここにある。
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