この記事は日経ビジネス電子版に『あなたのスマホも対象に? GAFA告発者が明かすデータ収集の実態』(12月7日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』12月13日号に掲載するものです
GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック=現メタ、アマゾン)元社員による告発が相次ぐ。10月の米議会公聴会では、子どもへの悪影響よりも収益を優先する姿が暴露された。社内の倫理観の欠如ぶりを正すべきだとの使命感が、告発者を駆り立てる。


パリ在住のトーマス・ルボニエックさんとビデオ会議で対面したのは11月中旬のこと。おもむろに「これを見ながらだと話しやすい」と、1枚の画像を共有された。音声を示す波形が表示され、合計1000時間分のデータであることが見て取れた。
ルボニエックさんは2019年5月からの数カ月間、アイルランドにある米アップルの施設で外注先スタッフとして働いていた。雇用の条件は「仕事内容を口外しない」「アップルの施設内で作業する」の2つ。大学院を修了したばかりの彼にとって、高賃金で最初の1カ月は住居も用意してもらえる仕事は、渡りに船だった。
仕事内容も単純だ。iPhoneやiPadなどに搭載する「Siri(シリ)」が録音した音声を聞き、AI(人工知能)が起こした文字と比較。実際と異なれば修正するだけだ。AIの性能向上のためといい、担当は母国語のフランス語。これほどお手軽な仕事はない。
ところが初日から、言いようのない不安に駆られた。「こんな仕事、いつまで続けられるだろうか……」
利用者の知らぬ間に録音
上のスクリーンショットは、このときに使っていた作業画面だ。再生ボタンを押すと音声が流れ、記載されている文言と比較。必要なら修正する。驚いたのは音声の内容だった。
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