この記事は日経ビジネス電子版に『クラスター散発する北海道の苦悩、神経すり減らす自治体や施設』(11月26日)として配信した記事に加筆、再編集して雑誌『日経ビジネス』12月6日号に掲載するものです。
感染者数が急激に減ったものの、集団感染も散発している。行動変容にワクチン接種。感染防止はつまるところ個人に頼らざるを得ない。第6波はいつ、どれほどの規模でやってくるのか。自治体の苦悩は続く。

「第5波の残りがくすぶっている」。北海道の旭川市保健所で新型コロナウイルス感染症対策担当を務める浅利豪部長は警戒心を緩めない。旭川市では新型コロナのクラスター(感染者集団)が10月から11月上旬までに7件発生。具体的な要因は判明していないものの、フィットネスクラブを起点とし、感染者が無自覚なまま繁華街に出向いたことで飲食店などに感染が広がったとされている。
「廃業も覚悟した」


このうちの1件となったスイミングスクールでは、10月中旬に職員や生徒ら8人の感染を確認した。スクールの代表を務める逢坂克幸氏は「感染発覚後は廃業も覚悟した」と胸の内を明かす。
それなりの感染予防策は講じているつもりだった。毎回、施設に来た生徒や職員らに検温を実施。生徒向けの便りなどでは「発熱や鼻水の症状がある場合はスクールに来ないでください」とも呼びかけていた。屋内プールで湿度も高いため、「医療関係者からは比較的安全だと言われていた」(逢坂氏)。感染が見つかった際には驚きを禁じ得なかった。
第5波が収束しつつある中で数十人規模のクラスターが発生した道内の別の市町村の社会福祉施設。この施設も検温や手指消毒といった感染対策は怠らなかったという。しかも、感染者の多くはワクチンを2回接種済みだった。今でも詳細な感染経路は分からないままだ。施設幹部は「まさかうちでクラスターが発生するとは。ただただびっくりした」と話す。
「何にも対策してないんじゃないか」「さんろく街(旭川市の繁華街)の感染を収めろ」──。クラスターが目立った旭川市には、市民からこうした批判が絶えず寄せられている。「おまえら全員クビだ」。そんな心ない言葉も届いた。
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