この記事は日経ビジネス電子版に『緩む社会、あちこちに「3密」 コロナ感染防止と日常回復のはざま』(11月25日)として配信した記事に加筆して雑誌『日経ビジネス』12月6日号に掲載するものです。

「第5波」を越えて感染者数が急減した日本。コロナ禍が過ぎ去ったかのような空気が流れ始めた。飲食店はほぼ通常の営業体制となり、繁華街や観光地もにぎわいを取り戻しつつある。ただ、これほどの感染縮小の理由ははっきりしない。それは、次なる危機と隣り合わせという意味でもある。

飲み屋街
飲み屋街
「居酒屋いかがですか」という呼び込みの声が響く東京・新橋。店内ではマスクを外したまま歓談する客も少なくない(11月5日)

 「いやー、久々に楽しんだな」「あの鍋は最高だったね」

 11月中旬、札幌市の繁華街・すすきのにある飲食ビルではこんな会話が響いていた。「金曜日、土曜日になると満席になる」と話すのはこのビルにあるジンギスカン料理店の店員。10月中旬まで臨時休業していたというバーでも「お客さんから『ずっと営業再開を待ちわびていたよ』といった声を頂く」(マスター)。満席で客に入店を断ることも多いという。

 7~9月にかけて新型コロナウイルス感染の第5波を迎えた日本。その後、新規感染者数は減少の一途をたどる。10月には緊急事態宣言が全面的に解除され、全国の繁華街がにぎわいを取り戻しつつある。

 そうした中で人々の「緩み」を警戒する声も上がる。

観光地
観光地
緊急事態宣言が解除され、観光地にも徐々に客足が戻り始めてきた(10月2日、京都・嵐山)(写真=共同通信)

 「もう少し声のトーンを下げてもらえますか」。東京・新橋の居酒屋「根室食堂」店主の平山徳治さんは、若年層の客に注意する機会が増えた。客がワクチンを接種済みかどうかは分からず、周囲の客が気にする場合もある。基本的には店側の注意を受け入れてくれるというが、「食事後もマスクを外したままだったり、アクリル板を脇によけたりして会話するお客さんが目立つ」と気をもむ。

 大阪の繁華街にある串カツ店でも、マスクを外したまま近い距離で談笑する客が散見される。「スタッフの募集が追いつかず、お客さんをお断りすることも度々ある」(店員)ほど活況だ。JR天満駅(大阪市)近くの立ち飲み酒場では、パーテーションもない「密」な状況で夕方から杯を交わしている。まるでコロナ禍が過ぎ去ったかのようなにぎわいぶりだ。

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